病気の栄養学

ネコも様々な病気にかかります。

そして人間と同様に適切な診療を受けないと、病気が進行し、重症の場合には死んでしまうことさえあります。

病気の治療には外科的な治療から、投薬等の内科的治療方法があります。

もちろんこれらの治療が適正ならばネコは速やかに元気になるでしょう。

ところで、最近よく耳にする「食事管理」または「食事療法」という言葉をご存じでしょうか?

これは毎日食べる食事によって、治療をサポートし、体に本来備わっている元気を取り戻そうとする力を強化しようとする療法です。

また、病気の種類によっては薬物療法と併用することで、病気を完全に治すこともできるのです。

逆にどれほど病院で受けた外科処置や投薬治療が良くても、家庭で行なう毎日の食事管理が不適切だったら、せっかくの治療が無駄になってしまうことさえあるのです。

それでは、食事療法が有効な病気の種類とその方法についてみてみましょう。

 

ネコの慢性腎不全と食事管理

腎臓の働き

まず、腎臓はどのような働きをしているのでしょうか?

健康な成ネコの腎臓は、一日に約20リットルもの血液をろ過し、尿という名の濃縮された排泄物を85g製造しています。

体にとって有害な物質を血液中から取り除き体外に排泄するという生命維持に欠かせない、とても重要な役割を果たしているのです。

他にも重要な働きがあります。

体内の水分の維持と調節、電解質の調節、ビタミンDの活性化、赤血球の製造を促進するエリスロポイエチンというホルモンの分泌、さらに血圧の調節をするホルモンの分泌もします。

腎臓は体の中に左右2個あり、 そのうちの1個が何らかの原因で機能低下しても他方が正常ならば、残る1個ががんばって代役を果たします。

しかし、二つとも障害を受け、機能低下を起こすか、もしくは機能しなくなると腎不になります。

人やイヌ、ネコも普段から、腎臓のすべての細胞を使って生きているわけではありません。

健康なときには腎臓の中の多くの部分は実際には働いておらず、休眠状態にあるのです。

ですから、健康な体を維持するには腎臓の一部を使っているだけで充分なのです

ここが最も重要なポイントです。

どういうことかといいますと、腎臓に障害、病気が起きても、普段からその一部しか使っていないので、まだ、障害を受けていない休眠部分が多く残っていて、それが目を覚まし、機能を代わりに担うようになるため、外見上は健康に見えるのです。

そして、どんどん病気が進行して二つの腎臓の75%以上が壊れてしまってからでないと、臨床的に腎疾患の症状が現れないのです。

 

ネコの腎臓病が増えている

ネコの腎疾患は増える傾向にあります。

アメリカでは10年前に比較し、4倍のネコが腎不全と診断されたのです。

理由はよくわかっていませんが、メインクーン、アビシニアン、シャム、ロシアンブルーならびにバーミーズ等の品種は、他の品種に比較して病気にかかる率が高いと言われています。

腎不全は、雄でも雌でも性別に関係なく発生します。

また、高齢になるほど病気にかかりやすくなってきます。

腎疾患のネコの60%以上が10歳以上の高齢ネコだったというデータもあります。

そして10~15歳のネコが罹患する確率は、若いネコに比較すると5倍も高く、さらに15歳以上のネコの場合には20倍も高い確率 で疾患が発生しています。

腎不全は、病気がかなり進行してからでないと、はっきりした症状が現れません。

 

逆に、症状が出たときはもうほとんど末期であるといえます。

病気が進行すると、血液中の有害な老廃物を取り除くことができなくなり、体の中に蓄積されるようになります。そのため、気分が悪くなって元気と食欲がなくなり、嘔吐が頻繁に起こり、脱水症状が起こり、痩せてきます。

そして、眠ってばかりいるようになります。

もしも、この段階の手前で適切に治療しないと、残された命は大変短くなります。

血液検査では、貧血がみられ、脱水症状も顕著になります。

アゾテミア(窒素血症)も特徴ある症状のうちの一つです。

これは血液中に尿素体窒素とクレアチニンという物質が高濃度に存在するために起こります。

腎疾患の原因はまだよくわかっていません。

いろいろなものが病気のきっかけとなります。

いったん病気が起こると、あとはドミノ倒しのように連鎖的に悪くなるのだと思われます。

そのきっかけには、尿路系への細菌感染、免疫不全、慢性の病気や腫瘍、遺伝、中毒等のほか、長年にわたりタンパク質を過剰摂取した場合(お肉中心の食事)も原因になるといわれています。

 

腎不全は治るのでしょうか?

腎不全が治るかどうかは、病気の原因によって左右されますが、病気で壊れた腎臓の部分が回復し元どおりになる可能性はまずありません。

獣医師はそれぞれのネコの病状に合わせて症状を改善させ、長期的には病気の進行を遅らせ、少しでも長生きできるように治療します。

腎不全の度合いは、10頭いれば10頭ともすべて異なった進行程度と病状を示します。

ですから、患者それぞれに、より正確度の高い診断をしなければなりません。

臨床検査もただ1回の検査では不充分で、何度か検査を実施し、前後の状況から診断するのが望ましいのです。

このような検査を実施すれば、その腎不全が急性型か慢性型か、回復可能かどうかを判断することも可能です。

急性の腎不全の場合、慢性のものよりも回復する可能性はかなり高いといえます。

急性腎不全は、治療を施せば病気の原因を取り除くこともできますし、完治する可能性もあります。

また、 そのネコが慢性的な腎不全ならば、ダメージを受けていない部分が少しでも長く、代償的に働いてくれるような対症療法をとることによって症状は改善されることがあります。

それでは、次に治療と維持療法についてもう少し詳しく説明しましょう。

 

《特異療法》

この療法は、急性期の腎臓障害に対応したものです。

病気の原因を見極めた上で治療を始めなければなりません。

例えば、細菌感染が原因ならば、抗生物質の投与がこれにあたります。

すでに壊れた腎臓の組織を回復させることはできませんが、さらに悪化したり、他のまだ健康な部分に波及したりすることをストップさせることは可能です。

 

《維持療法》

腎不全の療法の中で最も重要な部分です。

腎臓の病気になると血液中の種々の有害な老廃物をろ過・除去できません。

その結果、有害物質のレベルが上昇し、さまざまな悪影響が出てきます。

対症療法は、体内で作られるこれらの有害物質のレベルを低下させる目的でとられる治療です。

食欲不振、脱水症状、嘔吐、嗜眠、体重減少等の改善には欠かせない療法です。

この維持療法には次の療法が含まれます。

 

①食事療法
毎日食べる食事の中には重要な栄養素が含まれています。

しかし、腎不全に罹った時には、あまり摂取しない方がよいと思われる栄養素も一般の食事の中には含まれています。

そのような栄養成分の含量を減少させて、腎臓にかける負担を少しでも軽くすることが重要です。

リンの含量を減少させ、血液の酸性化を予防し、ナトリウムは抑制できる食事が必要になります。

さらに、タンパク質は制限しますが、高品質のもの(必須アミノ酸がバランスよく充分量含有しているもの)を与えます。

そして、タンパク質がカロリー源として利用されないように、充分な量のタンパク質とは別のエネルギー源となる栄養素(脂肪や炭水化物)を適切に含む食事が必要です。

 

②その他の療法
アシドーシス改善(点滴で治療すると同時に、体をアルカリに傾かせる成分が入った食事を選択します)、腸からの食事性リンの吸収抑制(経口的リンの吸着剤の投与)、ホルモン療法(血液を造るため)、カリウムの強化や人工透析等を行ないます。

ホルモン療法や人工透析以外は食事管理でかなりサポートできます。

また、療法食は獣医師の処方によって与えるものですが、これを適切な治療と併用しますと効果が期待されます。根気強く管理することで、治療が不要になるほど機能回復する場合もあります。

なお、腎不全の場合はできるだけ検査を受けて治療法を調整してゆく必要があります。

なぜならば腎臓の薬物代謝・排泄する能力が低下している場合があり、投薬量が通常では大丈夫でも、かえって腎臓に負担をかけ、悪化させてしまうこともあるからです。

 

ネコ下部尿路疾患(FLUTD)の治療と予防の基本的食事

ネコ (イエネコ)はもともと北アフリカ出身で、乾燥した風土に適応した体をもっています。

ですから、イヌのように水をガブガブ飲むことはあまりありません。

そして、少ない水分摂取でも大丈夫なように、尿(オシッコ)はかなり濃縮して排泄します。

このような性質上、ネコは泌尿器系の病気に罹りやすい動物です。

ネコは尿の排泄に関連した内臓の病気が多いのですが、これらをまとめて「ネコの下部尿路疾患 (FLUTD)」と呼んでいます。

この病気は、以前はネコ泌尿器症候群と呼ばれていました。

ネコの下部尿路疾患の原因としては代謝性(尿石)、炎症性、腫瘍、先天性異状、神経性等が考えられます。

調査によるとFLUTDの明らかにされている原因で最も多いのは尿石によるもので、全体の約1/4を占めています。

要するに尿石が原因で尿が赤くなったり(血尿)、排泄が困難になったりするのです。

重症の場合には、全く尿を排泄できなくなって、死んでしまいます。

そこで、ここでは尿石症の治療・管理について検討します。

 

①尿石ができやすくなる理由

ネコが尿石症に罹るかどうかに性別、年齢、品種はあまり関係ありません。

しかし、年齢により、 できる尿石の種類に若干の違いがみられます。

発生率が高くなるのは避妊/去勢、ケージ飼育、冬季等のいずれも運動量の低下によって飲水量が低下した時に起こるようです。

食事要因もやはり大きな部分を占めるようです。

一般的に「ドライフードを与えると尿石症を起こしやすい」と言われますが、これは飲む水の量とも関係しているようです。

ネコはもともと飲水量が少ないのですが、缶詰フードを与えると、水分量が確保されやすい特性があります。

ドライフードの場合は水分含有量が少ないので、腸管内の糞便に水が利用され、尿量減少につながります。

さらに一般ドライフードは消化率が低い物があり、糞便量も増加することになります。

その結果、さらに糞便に水分が奪われ、尿が濃縮されるのです。

尿石の形成には尿中の石となる成分の濃度(飽和度)と尿phが影響していますが、尿の水分減少、すなわち尿の濃縮が起こると、尿石成分の濃度上昇により、尿石が沈殿する危険は高くなります。

これは塩水を放置しておくと次第に水分が蒸発して、再び塩の結晶ができるのに似ています。

 

 

②ネコの尿石のミネラル成分

あるデータによるとネコの尿石は一番多いのがストルバイト(リン酸-アンモニウム-マグネシウム)で約57%、次はシュウ酸カルシウムで約29%、および尿酸塩尿石7%の順になっています。

過去のデータと比較するとシュウ酸カルシウムがかなり増加しています。

そこで、ストルバイトとシュウ酸カルシウムの2種の尿石について説明しましょう。

 

③ストルバイト尿石の管理

ネコは肉食のためタンパク質を多く食べます。

そのため、尿中へのアンモニウム、リンの排泄はもともと多くなっています。

そのうえ、食事中のマグネシウム(Mg) 含有量が高く(含有量が100キロカロリーあたり、20mg以上)なるとMgの尿中への排泄量は高くなります。

その結果、これら三つの成分が結合して結石(ストルバイト)を作ります。

また、結石の形成には尿のph (酸かアルカリか)が関係します。

正常なネコの空腹時の尿phは6.0近くで、酸性です。

ストルバイト尿石はph6.4を越えアルカリ性側に傾くと形成されやすくなります。

尿がアルカリに傾く原因は最近の飼い方にも関係しています。

一般に食物を食べた後は尿へのアルカリイオン排泄が増加するため、尿がアルカリになります。

これを専門的に「食後のアルカリ尿」と言います。

一般のドライフードをいつでも食べられる(自由給餌) 状態にしていると、尿をアルカリにする時間を長くさせるのです。

ですから、特別な処方のされていないフード(特にドライ)を自由給餌で与えていると、ストルバイト尿石の発生率は高くなるのです。

幸い、この病気は食事管理で内科的に治療することができます。

マグネシウムが制限され酸性尿を生成するよう処方されている特別療法食が内科的な溶解を助けます。

なお、治療できても、適切な管理を続けないと再発率は高くなります。

ですから再発予防の食事管理が推奨されます。

ただし、中高齢(6歳以上)になると腎機能が低下しますが、それに伴い、じょじょに体が酸性に傾きます。

このようなネコに、ストルバイト尿石を管理する食事を継続して与えることは勧められません。

 

④シュウ酸カルシウム結石の管理

この結石は外科手術によって尿石を取り除くしかありません。

そして摘出の後は、再発予防のための食事管理が推奨されます。
この結石の原因はシュウ酸塩、タンパク質、ナトリウム、カルシウム、ビタミンC、Dの摂取過多と尿の酸性化が挙げられます。
よりおいしくする目的で、高塩分のフードがありますが、これも結石の形成を助けるといわれています。
再発予防に推奨される食事は、タンパク質レベルが低くなっており、低ナトリウムで、そして成分中にシュウ酸カルシウム形成を阻害する成分が入っているものが推奨されます。
全般的な尿石管理において、飼い主さんが家庭で管理する場合、次の点に注意してください。

・獣医師に指示された食事管理を必ず守ること。
おやつやおかず は与えない。

・ネコの飲水を促進させることも必要です。
そのためには適度な 運動のできる環境(ツリーの設置等)を作り、室温を適温に保つことが重要です。
肥満は運動量減少につながるのでウエイトコントロールは必要です。

・トイレのすぐ隣に飲み水を置くのは良くありません。
飲水意欲を低下させるだけでなく、水が散乱したネコ砂や尿で汚染されやすくなります。
トイレと水の容器は50cm以上は離して置くこと。

・トイレは常に清潔に保ち、ネコが排尿しやすいようにトイレの場所を増やすことも良い方法です。
オシッコを我慢すると、その時間で結晶が作られてしまう危険性があるからです。

ネコの皮膚病と食事
食事が原因で皮膚病や下痢・嘔吐あるいはその両方を引き起こすことがあります。
これを食物有害反応と呼んでいます。
下痢は別の項で触れることにし、皮膚病に限定して話を進めます。
食物有害反応には食物アレルギーと食物不耐症があります。
食物性抗原以外の外的抗原に反応するアトピーも知られています。

①食物アレルギー
食物アレルギーは食事中の同じアレルゲン(アレルギーのもと=抗原)を数カ月~数年食べていて、腸の異変が起きた場合などが原因で、免疫反応が起こり、アレルギーになります。
食物抗原は主として蛋白質です。

②食物不耐症
食物アレルギーと異なり、免疫が関係しない食物有害反応です。
ですから、初めて食べた食物に対しても発症するのが特徴です。
よくわかっていませんが、特異体質のため、添加物に直接反応するものと、食物中に含まれる異常物質(ヒスタミン様物質)によるものとがあるようです。
魚が高温で加熱されるとアミノ酸の一種であるヒスチジンからヒスタミンに似た物質が形成されるとの報告もあります。
ヒスタミンは皮膚の痒みの原因になるものです。
実際は食物有害反応による皮膚症状の発生率は低く、「かゆみ」を示す皮膚病の大部分は外部寄生虫による過敏症が原因であり、これに細菌・酵母の2次感染が加わり複雑化したものがほとんどです。
また、ひとたび痒みを感じると動物は自虐(執拗に強く、噛む、擦りつける、なめる)しますので、皮膚変化はますます重症化するのです。

③食物有害反応の治療
最初に痒みの原因がノミ、ダニ、アカルス、カイセン等の外部寄生虫によるものかどうかを確認しておく必要があります。
寄生虫が関係ないとわかったら、皮膚のテストで抗原を特定する方法もあります。
一般的には「除去食」といわれる低アレルギー食を与える方法(食物試験法)がとられます。
食事を低アレルギー食に変更する前に、続発性の皮膚病(細菌・酵母感染)のために、すでに皮膚の状態が悪くなっているので、それを抗生物質の服用、皮膚病用のシャンプーで改善しておく必要があります。
痒みがひどい場合はまず薬で治療することもあります。
低アレルギー食は、患者がこれまで殆ど食べたことのないタンパク質源1種と炭水化物を組み合わせて作るのが良いとされています。
例えば、羊の肉を一度も与えたことがなかったら、羊(ラム)肉が適切となります。
炭水化物源としては米飯か、ゆでたジャガイモが良いでしょう。
獣医師が処方してくれる療法食には、全く新しい種類のタンパク質(加水分解タンパク)を使ったものや、羊肉と米から成る低アレルギー食があります。
ネコに合った食事を選んでもらいましょう。
低アレルギー食以外のものは与えてはならないので、家族全員の協力が必要です。
飲み水も注意が必要で、スープもだめです。
人用のきれいな水を与えましょう。
同居のネコやイヌがいる場合、それらと隔離し、盗み食い等させないようにするのが肝要です。
たいていは、食事の変更はお腹の調子を考えて7~10日かけてじょじょに行なうのですが、この場合は現行の食生活から低アレルギー食への切り替えを急ぐ必要があります。
そのため、食事の急な変更による下痢が起こる可能性はあります。
ですから、可能な限り、一日の食事量を少量ずつ数回に分けて与えるようにします。
そうすることで腸がびっくりするのが防げます。
症状が落ち着くまでには、少なくとも6~8週間継続して与える必要があります。
症状が改善されたら誘発試験を行います。
低アレルギー食に、1種類ずつタンパク源を加えて反応をみます。
加える食品は通常は肉類からはじめます。
反応が出たら試験を中止し、再度低アレルギー食のみにします。
こうして特定された抗原は給餌しないようにします。

④アトピー
アレルゲンの吸引または経皮吸収によって起こります。
症状は強い痒みです。
皮膚の変化は前述同様、主として自虐と感染によるものです。
治療にはアレルゲンを発見し、それに対する脱感作法かアレルゲン回避法が採られます。
しかしアレルゲン回避法は飼い鳥の羽、他のペットの被毛、タバコ等除去可能なもののみに実際的に有効で、花粉・ハウスダスト等の回避は事実上困難でしょう。
対症療法として痒みを抑える薬剤と患者の「痒みの閾値(いきち)」を上げる方法が併用されます。
皮膚の細菌/酵母感染、乾燥肌等は「痒み閾値」を下げる方向に働き、少しの刺激でも痒がります。
一方、冷水浴、低刺激シャンプーによる入浴、皮膚湿潤剤塗布等は「痒み閾値」を上げるのに効果があります。
高温多湿の時期には部屋を涼しくしてやることも効果があります。

肝臓の病気と食事
少々肥満ぎみのネコの食欲にムラがあったり、食べなくなったりしているようだったら要注意です。
もし、食欲が全くなくなり、動かなくてじっとしているならば、赤信号です。
そのような場合、血液の検査をすると肝臓の機能が異状になっていることを示しているでしょう。
黄疸や脱水症状も見られるでしょう。
重症になると肝性脳症といって、意識が低下したり運動障害がでたり、ひどい場合には昏睡状態に陥ります。
中毒や、腫瘍、そしてウイルスの感染等が原因で重症の肝臓の病気になりますが、もう一つ見落としてはならないのは、脂肪肝症候群 (肝リピドーシス)という病気です。
この病気はイヌよりもネコに比較的多く発生しますが、飼い主の注意と努力により予防ができる病気です。
ところで、肝臓の病気は中毒や感染が原因でも、治療ならびに食事管理はおおむね同じです。
肝臓に新陳代謝の負担をかけないように、良質かつアミノ酸バランスが良好に調整されたタンパク質を過剰にならないように与え、脂肪、炭水化物のバランスも微妙にコントロールしなければなりません。
どのようなレシピの食事を与えればよいのかは、獣医師に尋ねましょう。
また、このような食事を自分で作るのが困難な場合、療法食を用いるのが最も良い方法でしょう。
この点も、専門の獣医師に尋ねましょう。

肝リピドーシスの診断
肥満ぎみのネコが食欲不振になったら、この病気を疑う必要がありますが、診断は肝臓の組織検査(バイオプシー)や血液検査で行ないます。
ただし、バイオプシーは時として肝臓の機能低下が進行し、血液凝固系に異常(血液が固まらない)を起こしている場合には危険なため、実施できないこともあります。

治療方法
他の病気の場合と同様に、点滴で体内の水分の補給とイオンの供給(酸塩基平衡、電解質異常を是正)をする必要があります。
そして、ネコが衰弱しないように、より早い段階で腸を使った、栄養の補給をすることが最も重要です。
基本的には水分の補給と良質のタンパク質の補給が有効ですが、食欲がないので、強制的に給餌する必要があります。
しかし、肝リピドーシスになった場合、口を通して食物を与えることは避けなければなりません。
気分の悪いときに、むりやりにフードを口から与えると、そのフードを大嫌い(食物嫌悪)にさせてしまいます。
何とか食べて欲しいという願いから、食欲の低下したネコにいろいろな食事を与えると、それらすべてに食物嫌悪症を起こしてしまうことになってしまうのです。
また、食物嫌悪症を発現してしまうと、病気から回復し始めたときに、自発的に食べる摂食行動が起こるまでに、時間がかかってしまいます。
よって、良質の栄養を含んだ流動食をチューブで注入する方法(経鼻カテーテルや胃瘻チューブ法)で管理することが必要です。
大部分のネコは、自分自身で食べられるようになるまでに食事療法を3~6週間続ける必要があります。

予防方法
この病気の予防は、まず第一にネコを肥満にさせないことです。
肥満の結果としてフォアグラのような肝臓のネコになってしまうのです。
もしも、すでに肥満している場合は、獣医師の指導のもとに、じょじょに減量用の食事に変更する必要があります。
この点については肥満のコントロールのところで詳しく説明していますので、そちらをご参照ください。

ネコの下痢における食事管理
下痢には原因が様々あります。
ウイルス性、細菌性、原虫性、回虫、鞭虫や鉤虫などの寄生虫性の他に、急激な食事の変更、過食による正常細菌叢の変化等じつに多様です。
結局、お腹の中で起こっていることなので、明確に診断することは困難です。
しかも原因物質を食べたりして、発症するまでに時間がかかることが多いので、飼い主さんも何が原因か検討もつかないことが多いのです。
さらに、下痢や嘔吐を繰り返す症例で、いろいろな内科療法、食事管理をしても治らないので、詳しく検査すると、消化管の腫瘍だったというケースもあります。
特に注意が必要なのは、下痢だからといってやみくもに抗生物質を与えないことです。
抗生物質の使用はかえって腸内の健康な正常細菌叢(さいきんそう)を壊し、下痢を長引かせるだけでなく、長期的には副作用などで腎臓の病気をも引き起こすことになるのです。
下痢には、大別して小腸性下痢と大腸性下痢があります。
そこで、それらを順番に見ていくことにしましょう。

①小腸性下痢
下痢の治療の第一歩は脱水症状、血液中の酸アルカリ・バランスとイオン(電解質)異状の補正を行なうことです。
そして、同時に24~48時間以内の絶食(飲水は可)により腸管の休養をはかります。
絶食でほとんどは症状が改善されます。
その後、消化吸収率の良い食事を与え始めますが、この際、残渣(ざんさ、カスになる成分)の少ない食事を与えると良いでしょう。
また、与え始めは少量ずつ数回に分けて与えます。
ミキサーを用いてフードにぬるま湯または鶏肉ささ身のスープを加えペースト状(粥状)にし、加温して与えますと、なお回復の助けになるでしょう。
脂肪便もよく見られますが、脂肪の消化不良は胃、膵臓、胆管系の機能障害により起こる可能性があります。
脂肪の乳化には胆汁酸塩が必要で、消化吸収には膵リパーゼが必要なため、脂肪便の時は、腸以外の内臓の病気も疑う必要がありますので、獣医師による治療が必要です。
なお、脂肪の吸収がかなり障害されている場合には脂溶性ビタミンの非経口的補給が必要です。

②大腸性下痢
糞便を調べて寄生虫の有無を確認しますが、検査で虫卵が確認できなくても駆虫剤を与える方が良いでしょう。
なぜならば、オカルト寄生(虫はいても排卵していないこと)がよくあるからです。
また、慢性の下痢の場合、神経性下痢や細菌性毒素による中毒症ならびにアレルギーも疑う必要があります。
食事管理は、1高繊維食、2低残渣食、3低アレルギー食のいずれかが有効なことが多くあります。
ですから、この順番に食事管理を進めてゆくのが良いでしょう。
多くは絶食後、高繊維食を与えることにより症状が改善できるものが多いです。
現在飼い主が与えている食事に繊維を添加することも可能ですが、適正量がわからないことと、栄養バランスの保持は困難で、おいしくなくなるので、食べてくれない場合が多いでしょう。
市販製品には高繊維質でバランスの取れた栄養の供給できるフードがありますので、適切なものを獣医師に選んでもらいましょう。
食物繊維は糞便量を増やして腸を膨張させますが、これにより、腸の分節運動が正常に戻り、便の通過時間が正常になり、体内への水分吸収が促進されます。
食物繊維自身がスポンジの役割を果たして分を保持し、水溶性の便を硬くする働きを果たします。
高繊維食に2週間反応しない場合は、低残渣食に切り替える必要があります。
低残渣・高消化率食は結腸に到達する未消化物を減少させ、結腸粘膜の刺激を減少させます。
獣医師の処方による消化吸収率の良い、また適度な繊維質を含んだ療法食が利用可能です。

③炎症性大腸炎
慢性の大腸性下痢のもう1つの形で、炎症に関係する細胞が多数集まっているリンパ球性・形質細胞性大腸炎がみられることがあります。
この病気の場合、嘔吐を併発することがあります。
これは、一種の過敏症反応と考えられています。
原因はよくわかっていないのですが、原因の一つとしてアレルギーも含まれています。
この病気に対する処置として、まず低アレルゲン食を4週間試験給与してみます。
自由に動き回り、何でも食べてしまう患者では行動を厳しく制限する必要から、ケージに入れておくことが重要でしょう。
低アレルゲン食としては、タンパク質の種類を制限し、しかも高消化率のものを含む食事が推奨されます。
原因を特定する場合は、皮膚疾患の時と同様に行ないます。低アレルゲン食を与えていても改善しない場合には内科的薬物療法が必要となります。

糖尿病の食事管理
糖尿病は人間と同様にインスリンというホルモン療法に反応するかどうかで、二つの型に分けることができます。
しかし、糖尿病の症状はどちらも同じで、一般的に尿が増加する(多尿症)、水を良く飲む(多潟多飲症)、よくガッガツ食べる(多食症)にもかかわらず体重減少するなどです。
時に白内障を伴うこともあります。
血液検査では血糖値は180㎎/dl以上になり、尿中に糖が検出されます。
ネコは肥満が原因で起こるものも多いと言われています。
ネコは病気やストレスの影響を受けやすく、糖尿病の病状も絶えず変動することが多いので注意が必要です。
また、ネコはストレスでインスリン要求量が大きく変動することが知られていますので、管理が難しくなります。
糖尿病であることを確実に診断するには外見の症状に加えて血液や尿検査で高血糖、糖尿がみとめられる必要があります。
ケトン尿という症状も見られることがあります。

①インスリン療法と食事管理
糖尿病の管理にはホルモンの一種であるインスリン療法が採用されます。
ネコの場合は、一定期間のインスリン療法で病状が安定したら、全くインスリンを必要としないほど回復するものもいます。
初期の療法で血糖値を安定させると同時に食事療法を併用して治療を続けるのが良いでしょう。
どの食事を選択するかはそのネコの合併疾病によって異なります。

②高繊維食の役割
通常、食事管理には繊維質の増量が役立ちます。
繊維質の増量には2つの利点があります。
1つは肥満管理に有効で、体重減少に役立つということです。
肥満はネコのインスリンに対する反応性を鈍感にさせますが、減量によりインスリンに反応しやすくなるのです。
ですから、減量に伴い、より頻繁にインスリン投与量を調節する必要がありますので、獣医師の診察は定期的に受ける必要があるでしょう。
もう一つの利点は、繊維質の直接作用により、食後の血糖値の変動が最小限になることです。
繊維質を多く含む食事としては種々ありますが、かなり肥満なネコの患者には高織維食を、ほぼ適正体重の患者には中等度の繊継食を与えます。
すでに病気が進行していて、体重が減少しているネコには高消化率の食事が推奨されます。
また、食事の与え方ですが、インスリンの効果が持続している時間内に一日量を2~3回に分けて与えるのが良いでしょう。
給餌スケジュールについては、獣医師の判断にお任せしましょう。

③その他の注意点
人間用のおつまみや半生タイプのキャットフードは与えてはいけません。
半生タイプの多くは多量の糖質を含み、糖尿病を悪化させる危険があります。
また、家庭での運動量は常に一定にする必要があり、余分なストレスは避けなけなればなりません。
運動量の急激な変化は消費するブドウ糖を変化させ、インスリン効果を変動させるからです。
キャットショーへの参加、環境の変化、見知らぬ来客、新しい仲間(ペットの増員)等はいずれも動物にとって大きなストレスとなることを認識しておくべきでしょう。
ストレスがかかりますと、副腎皮質ホルモンが分泌され、 これはインスリン療法に抵抗します。
また、妊娠もインスリン抵抗の原因となるので糖尿病のネコは繁殖には使ってはいけません。

療法食というキャットフード
市販されているキャットフードには様々な種類があります。
それを大きく分類しますと一般の健康なネコ向けのキャットフードとプレミアム・キャットフードがあります。
プレミアム製品は良質の原材料を使っていたり、栄養組成が特別なものであったりしますので、多少高価になっています。
プレミアム製品のなかには年齢とカロリー必要状況にあわせたライフステージ・コンセプトに基づいた製品もあります。
ライフステージ・コンセプトをもったプレミアム製品を含め、大多数が一般の健康なネコのために市販されているものですが、一方で病気になったネコの健康を取り戻すために重要な働きをする「療法食(処方食)」と呼ばれるキャットフードがあります。
「療法食」は一般の健康なネコ用フードとは異なり、一つのメーカー製品のなかにも非常に多種類のものがあります。
これは病気の種類によって、与えなければならないものと与えてはいけない栄養素の種類とバランスがそれぞれ異なっているので、それに対応するように処方されているからです。
逆に言いますと、ある病気に対して間違った処方のフードを選択すると、治らないばかりか、病気を悪化させることさえあるわけです。
たとえば、ストルバイト尿石の溶解用フードを心臓の悪い鬱血を起こしているようなネコに与えた場合、さらに悪化することがあるのです。
また同じ尿石でもシュウ酸カルシウムの尿石をもつネコにストルバイト尿石溶解用の食事を与えるとかえって悪化します。
ですから、「療法食」の選択は獣医師の診断に基づかなければ危険だと言うことになるのです。
素人判断で選択して与えるのは良くありません。
これは他の抗生物質のような薬と同じように考える必要があるのです。
ですから、この「療法食」は獣医師から入手することになります。
「療法食」はいくつかのメーカーのものがあります。
それはヒルズ社の「ブリスクリプション・ダイエット」、マスターフーズ社の「ウォルサム」、その他「スペシフィック」や「ユーカヌバ」「ロイヤルカナン」等が知られています。
各メーカーによって、対応できる疾病の種類、缶詰 ・ドライの品揃え状況等が異なっています。
獣医師はこれらの製品の中から、患者の症状に合わせて与えるべき食事を選択します。
ですから、処方された食事をきちんと与えることが重要です。
また、認識しておかねばならないのは、食事管理は薬品と異なり、即効性のものではないということ。
つまり、症状の改善ならびに効果が現れるまでには、
かなり時間を要するということです。
肝心なことは、食事管理とは適切な治療行為をサポートするものだということを理解して、短期間にあれこれと食事内容を変更するのではなく、先生の指示どおり、じっくりと取り組むことです。

自分で作る療法食
前述したとおり、「療法食」はかなり特殊な栄養組成となっています。
ですからこれを自分で作ることはかなり困難ですし、また毎日作るのは大変です。
特別なケースを除き、獣医師の処方によって選択された市販の「療法食」を与えるのがベターでしょう。
また、療法食は必要な栄養素と削減する栄養素を厳密に組み合わせていますので、療法食を食べない場合にあれこれとおかずを加えるのはよくありません。
おかずを加えると、栄養バランスが崩れてしまうからです。
しかし、次ページに示すレシピのものがご家庭で準備できるならば、これらは、それぞれの病気の管理に不都合になることが少ないので、10~20%程度加えて与えることは良いでしょう。

ネコの肝リピドーシス
この病気は1970年代後半に初めて発見されましたが、専門家によると、この病気は増加傾向にあるそうです。
肝臓に脂肪が過剰に蓄積した結果、正常だった肝臓の代謝がダメージを受けるので、脂肪肝症候群とも言われています。
あまり病気もしたことのない肥満のネコが、病気になる危険性が高いと言われています。
この病気の症状は食欲不振からはじまり、普段の行動も変化し、元気がなく動きが鈍くなり、他の同居ネコから遠ざかり、身を隠す時間が長くなります。
そのうちに眠ってばかりになります。
体重減少、運動障害、嘔吐、脱水症状、黄疸、疲労等も見られます。
もしも、ネコが48時間以上、自分で食事を食べようとしない場合は、今すぐにかかりつけの獣医科病院に相談するべきです。
ネコは大変辛抱強い動物です。
体調が悪くてもしばらくは我慢します。
そのため、飼い主が体調の変化に気付かないことも多く、気が付いた時は手遅れというケースがよくあります。
ほんのささいな変化が病気を発見する大きな手掛かりとなる場合が多いので、よく注意して観察してください。
それでは、どのような状態のネコが肝リピドーシスを起こしやすいのでしょうか。
最も発症しやすいネコは、活動的でない肥満ネコで、食欲にムラのあるネコです。
これらの条件が当てはまるネコに、何らかのストレスが加わった場合、病気が発症しやすくなります。
何がストレスになり、どの程度の役割を果たすのかはよくわかりません。
しかし、同居ネコが多すぎる場合や、旅行、寒すぎる部屋等も大きなストレスになるでしょう。
注意しなければならないのは、急な食事の変更も、この病気の引き金になるということです。
ですから、何らかの理由でネコの食事内容を変えなければならない場合は、かかりつけの獣医師による指導のもとに時間をかけてゆっくりと食事の変更を行なうべきです。
その他、がんや膵炎、糖尿病および腎疾患等の病気も肝リピドーシスのきっかけになるといわれています。