偏食ネコに育てない

頑固な偏食ネコの食事を変えることは大変むずかしく、飼い主も根気のいる作業になります。
食べ物の調達だけではなく精神的にも苦痛を伴うことになりかねないので、偏食ネコを育てないということが重要です。
19世紀の後半までは、多くのネコたちは農作物を荒らしたり、伝染病の媒体となるネズミを捕って食料とし、人間からは少量の食べ物を与えられ、人間と共存してきました。
その時代は母ネコが離乳を担当し、捕ったネズミ、小鳥、昆虫など多種の食べ物を、本能に従って子ネコが食べやすいように工夫して与えていました。
現代の飼育環境では、子ネコの哺乳、特に離乳は飼い主が担当するようになりました。
人間が里親になると、半野生時代の母ネコとは違い、間違った愛情で離乳を進めかねません。
子ネコの味覚反応は、早いネコでは生後1日目には現れます。
ミルクの味を覚え、最初に飲んだミルクと味の異なるミルクの区別がつく子ネコも出てきます。
発育につれてどんどん味覚・視覚・臭覚を伴う摂食行動が現れます。
子ネコの離乳期から6カ月くらいまでの環境が成ネコになってからの、食べ物の好みに最も強い影響を与えます。
その間にさまざまな種類の食べ物に巡り合うことがなく育った子ネコは、1~2種類の特定の食べ物以外は食べようとしなくなることがあります。
偏食をなくすためには、離乳や子育てを担当した飼い主が、より多くの種類の食べ物を与えて味覚・視覚・臭覚の経験を積ませなければなりません。
このようにして育った子ネコは、成ネコになってから、新しい食べ物に順応しやすく偏食になることは少ないようです。
ネコの食べ物もグローバル化したとはいえ、日本では魚系統の食べ物が好まれ、欧米では肉系統の食べ物が好まれます。
このことは、離乳期から成長期までに、どのような食べ物を与えたかによります。
離乳食として日本では魚のすり身を使用することが多く、欧米では生肉・レバーなどを使用しているためとも考えられます。
せっかく何でも食べるように育った子ネコが、新しい飼い主のもとで誤った愛情のために偏食になることがあります。
成長するに従って味覚がますます発達します。
里親のもとで、さまざまな食べ物を試されて、好物を選んで与えられるようになります。
そうなると、今度は好物を要求し、すぐもらえることを学習して、他の食物を食べなくなります。
飼い主は他の食べ物を食べないことを心配し、再度好物を与える、といった悪循環を繰り返して、ついには頑固な偏食ネコに育ってしまうことがあります。何でも食べてくれる、 いわゆるグルメネコならまだ良いのですが、極端な例ですが、カニカマだけ、ホタテだけしか食べないネコがいます。
また、離乳食が大好物で成ネコになっても離乳食以外は口にせず、肥満になり困っている飼い主もいます。
いずれにしても、頑固な偏食ネコの食べ物を変えることは並大抵のことではすまない場合が多く、偏食ネコに育てないことが重要なことです。

頑固な偏食ネコの食事の変え方
食事を変えることには、さまざまな理由があります。
病気の時は勿論のこと、食事による病気の発症、重度の偏食による栄養障害、妊娠、年齢による食事の変更、飼い主自ら手作りのスローフードを与えたい、飼い主の都合で手作りの食事を与えることが困難になり市販のフードに変えたいなど、さまざまな理由があります。
簡単に新しい食事に馴染んでくれる場合は問題がないのですが、なかには頑固なまでに今までの食事にこだわり、新しい食べ物を拒否するネコがいることも事実で
す。
そのような場合に食事を変えることはネコにとっても飼い主にとっても、心身共に負担になります。
新しい食べ物を1日、2日食べないと、飼い主は心配で耐えられなくなり、今までと同じ食事を与えてしまい不成功に終わる事例をよく目にします。
お腹がすいて何か食べる物を頂戴とねだられ、新しい食事を出すと拒否され、それでもしきりに食べ物をねだられる飼い主の辛い心境はよく理解できます。
しかし、ここで辛抱できるかどうかが成否につながります。
あくまでもネコの健康状態を見ながらですが、一気に変える方法と、じょじょに変えていく方法があります。
いずれの場合でも、ネコの健康状態を把握している、かかりつけの獣医師に相談してから試してみたほうが良いでしょう。
食事の変え方は以下のようになります。
どの方法が良いかは、ケースバイケースです。
どの方法でもいつもの場所に新鮮な水はたっぷり置いてください。

新しい食事に一気に変える方法
・今までの食事を全てかたづけ、 少量の新しい食事を今までの食事の場所に置いてみる。
食べない場合でも、1時間くらいしたらかたづける。
何か欲しがったら、新しい食事を再び置いてみる。
この行動を食べ始めるまで繰り返す。
3日目になっても新しい食事に全く興味を示さない場合は、他の方法に変更した方が良い。

・古くなった食事は嗜好性が落ちるので、いつも少量でよいから、新鮮な食事を置くこと。

・飼い主の寝ている時間帯は、他の食べ物の要求ができないので、夜中は新しい食事を置いておくこと。
夜中に渋々食べ始めるネコもいる。

新しい食事にじょじょに変える方法
・今まで食べていた食事に、少しずつ新しい食事を混入する。
最初は新しい食事の混入比率を10%位から始めてみる。
この段階では、個体差はあるが普通に食べるまで平均14日間かかる。
食べ具合によりじょじょに比率を上げ、最終的には100%新しい食事にする。

前記の方法でだめな場合
・新しい食事を少し温めてみる。
臭覚に訴えることと、大半のネコは本能的に体温くらいの温かさの食事を好むためである。

・鰹節、チーズ、貝柱、ささみなど嗜好性の強い食事を少量ふりかみる。

・遊びながら人間の手から直接食事を与えてみる。
その間に味を覚えさせるために、食事をネコの口の中に入れてみる。

・風味が落ちない、なるべく新しい物を与えてみる。

・市販のフードは多種類あるので、種類によっては食べるフードがあるかも知れない。
サンプルを何種類かもらったり、できるだけ少ない量の包装品を購入し、多くの種類で試してみる。

「猫にまたたび」といって、民間療法として粉末のまたたびを振りかけて食べさせようとする人たちがいます。
またたびの有効成分であるマタタビラクトン、アクチニジンなどがネコ科の動物に対して興奮作用、催眠作用、流涎作用があり、神経、循環、呼吸、平滑筋などに対し作用します。
またたびには有害成分は含まれていませんが、問題になるのは使用量や使用方法です。
欧米でもキャッツパウダーといって市販されていますが、使うことにより耐性ができて反応しなくなったネコが増えているようです。
ネコのまたたび反応を人間に当てはめてみると、アルコールによる酩酊状態といえるので、継続して新しい食事を食べるかというと、無理があります。
いずれにしても、頑固な偏食のネコは病気の誘発、栄養失調を招きかねないので最初から何でも食べるネコに育てることが、大切なことです。
なかには、仲間のネコの喪失、増加、環境の変化などによるストレスが原因だったり、臭覚が損なわれることによる無食欲症もあります。
ネコでは大脳の外側視床下部が摂食中枢と考えられています。
場合によっては薬物で摂食行動を強化させることができます。
獣医師に相談してみるのも一つの方法です。