猫のボディ・ランゲージ

猫のボディ・ランゲージ
全身を使って語りかける
感情表現はとても豊か
猫とのコミュニケーションは、鳴き声とポディ・ランゲージを組み合せたものです。
猫のいいたいことを理解するのは、ある程度の基本的な知識を持っていれば、あとは観察力だけのかんたんなことです。
猫に限らず、動物はそのときの状況に応じて、決まった姿勢や表情をします。
それが自分の感情や訴えたいことを伝えるサインになるのです。
猫の場合はしっぽや目、耳などの動きが豊富で、それらと体のいくつかの部分を連続的に変化させて組み合せていくので、表現の内容は複雑で、ボディ・ランゲージのレパートリーはとても多くなります。
代表的なものをマスターするだけでも、猫との仲はぐっと親しいものになります。

座り方、寝姿でわかる精神状集
●香箱をつくる・箱座り
キリン、ウマ、ヒツジ、シカなどの草食動物は立っていることが多く、座っている姿はめったにお目にかかれません。
それに比べて肉食動物は、座った状態が基本的な静止のスタイルです。
猫の座り方はいろいろですが、基本は「招き猫スタイル」。
前足は伸ばし、後ろ足だけを曲げている形です。
お腹を地面につけて前足を前につき出したスタイルは、攻撃するにしても逃げるにしても、すぐ次の行動に移れる用意ができている姿勢です。
お腹を地面につけ、前足をかかえ込むように曲げた座り方は、「香箱をつくる」「箱座り」といわれ、すぐには動けない姿勢です。
つまり、安心しきって、リラックスしている証拠です。
こんなときはやさしくなでたり、声をかけるなどし、急に立ち上がったり、驚かしたりしないようにしてあげましょう。

●安心するほど、手足は伸びる
寝ているときは、もっとも無防備な状態です。
だらんと手足を伸ばしたり、お腹を見せて熟睡していれば、安心しきっている証拠。
ハイム・テリトリーでの寝姿です。
寒いときは、前足で頭をかかえ、ボールのように丸くなります。
箱座りで目をつぶっているときは、安心しながらの仮眠。
招き猫スタイルで目を閉じているときは、不覚ないねむり、あるいはちょっとの休急。

●猫がお腹を見せるときは、リラックスや親愛の情の表れ。犬は降参の意味もあります。
●しょげたとき、病しているとき、猫のヒゲは下がります。

猫のボディ・ランゲージ
目のサイン
目は心の窓
めまぐるしく状況が変化することを、「猫の目のような」という表現があるように猫の目の表情はじつによく変化します。
完全にリラックスしているとき、目は閉じています。
母猫が子猫をなめる、食事をしている、落ち着いて毛づくろいをしているときなどです。
排便中もこうした表情になることがあります。
目を半分閉じて、ノドをゴロゴロさせていれば究極の満足サインです。

自律神経の働きで瞳孔の大きさが変化
瞳孔は、明るいところでは小さく細く、暗いところでは丸く大きくなります。
この現象は光とは関係なく、感情の高まりによる自律神経の働きでも起こります。
何かを見たり感じたりして、強い刺激を受けると、目の瞳孔がぱっと広がります。
猫同士ライバルに出会ったときなどのように、恐怖や警戒心を感じた場合と、まったく逆に、動くものや大好きなものを見つけたときなどのうれしさ、興奮の場合があります。

親愛からそらす、敵意で見つめる
獲物を見つけると、じっと見つめながら接近します。
猫同士見つめあったら、威嚇、挑戦、出方次第でケンカに発展します。
ですから、猫は見つめあうのは少々苦手。
猫に親愛の情を示したいときは、さりげなく目はそらすのがポイントです。

耳としっぽの動きも併せて見る
耳は動くアンテナ
耳だけが小さく動いていたら、「どうしようかな」と思っているところ。
たいてい、しっぽも一緒にぴくぴくしています。
瞳孔が広がり、耳がぴっと前を向いていれば、興味の対象になっているものの音や動きに夢中になっています。
動くものに神経を集中させているときは、上くちびるもふくらみ、しっぽはうねうねと揺れます。
耳だけが片方向の向きに傾いているときや、あちこちに動くときは気もそぞろ、警戒サインの場合もあります。

しっぽがピンと立っていれば、親愛の情
猫のしっぽを見ていると、まるでしゃべっているかのように、よく人間の言葉に反応しています。
呼ばれて近寄ってくるとき、親しみを表したり、注意をひきたいときは、おおむねしっぽをピンと立てているのは、子猫が母猫に対してする行動のなごりです。
母猫におしりをなめてもらうとき、ついて歩くとき、あまえるとき、子猫は必ずしっぽをピンと立てます。
おとなになると、これが仲良しの猫や飼い主への親愛の情の表現になります。
ちなみに、猫は人の言葉の内容を声の高さや口調で判断するため、話しかけるなら母猫のトーンに近い高めの柔らかいトーンが有効です。
逆に、しつけや注意のときは、低めのきついトーンが効果大。

●ゴロゴロいいながら、おでこ、くちびる、アゴの下など、ニオイを出す臭腺がある部分をこすりつけ愛情とテリトリーを示します。このほか、しっぽ、ツメ、足の裏、肛門にも臭腺があります。

猫ならではの、サイン
●モミモミは幸せのしるし
友好のボディ・ランゲージで、猫独特なのが「モミモミ」。
柔らかいものの上でゴロゴロいいながら前足を交互に踏みつけるしぐさです。
これは子猫が母猫のお乳を飲むときの動作の名残です。
母猫から早く離された猫に見られることが多く、おとなになっても、温かく柔らかいものに前足が触れると、お乳をもむように前足を動かします。
自分が子猫になった気分で、その猫の満ち足りた気持ちを表しているのです。

●スリスリは親愛の情
好きな相手や場所に体をこすりつける「スリスリ」も、猫特有のボディ・ランゲージ。
鼻と鼻をつきあわせるあいさつから一歩進んだ親愛・友好のサインです。
自分のニオイを相手につけ、相手のニオイも自分につけることで、切っても切れない仲に。

●飼い主の機嫌をチェック
猫がお腹を見せてごろんと横になるのは、遊びの誘い、甘えですが、これは同時にご主人のご機嫌うかがいのサインです。
自分の主張がどこまで通るか、おしはかっているわけです。
これは、以前ごろんとしたら遊んでくれた、今ごろんとしたら遊んでくれるかな?
という学習の成果です。
新聞などを広げていると、その上にごろんと乗ってくるのも、暇そうだな、遊んでくれるかなの猫の判断。
「どいてね」と猫をどかせば、かまってもらえた!と喜びます。

猫語マニュアル総まとめ
1. 後ろを向いていても、大抵こちらのことも気にしています。
2. ツメをとぎながら、よく腰や背骨のストレッチをします。
3. 香箱スタイルは、リラックスの証しです。
4. 寒いときの熟睡の図。
5. かなり怒っています。
6. 威嚇のときは四肢を突っ張り、体を大きく見せようとします。
7. 暑いとき、安心しきっているときの熟睡の図。
8. リラックスまたは誘いの図。
9. 遊んで!のポーズ。
10. 遊びの誘いにのらんとする図。
11.ひたすら甘えの図。
12. こころと体が騒いでいる図。
13. 首だけ回すのは、ちょっと気になる図。
14. 狩猟本能に身をまかせる図。
15. 挨拶・親愛の情の提示。

猫の体のメカニズム
猫の目の特徴
猫の顔は、大きく開くと丸く、収縮するにしたがって縦に細長くなる縦瞳孔です。
同じネコ科でも、トラやヒョウは人間と同じように丸いまま収縮します。
目が開いたばかりの子の目はみな青っぽく、生後10日目ころに、本来の目色になります。
目の形は、目尻のつり上がったアーモンド・シェーブと、丸い形のラウンド・シェプの2種があります。

夜目が効く動態視力
猫は近眼ですが、前庭眼球反射が発達しているため、動態視力に非常に優れた視覚動物といえます。
また、角膜と水晶体が大きく網膜はわずかな光でも増幅する機能を持つため、人間の6分の1の光量でものを見ることができます。
目のしくみは、網膜で光を感じ、網膜に写った映像を視神経が脳に送るシステムです。
夜行性の動物は、網膜の後ろ側にあるタペータムという反射板が発達していて、視感度を上げる働きをしています。
猫の目が暗やみで光るのは、入った光がこのタペータムに反射するからです。
網膜は、桿状体という細胞で光を感じ、錐状体という細胞で色を識別しています。
夜行性の動物は、桿状体の数が多く、錐状体が少ないため、色を識別しにくい構造になっています。
ですから、猫や犬は赤や緑をうっすらとしか見分けられず、かぎりなくモノトーンに近い世界にいるわけです。

広い視野と優れた距離感
肉食動物である猫の目は、顔の正面についています。
そのため、ものを立体的にとらえる「両眼視野が広く、獲物との正確に測ることができ、全体視野も250°あります。
これに対して、草食動物の目は、顔の両側についた左右の目で別々にものが見える「単眼視」のため、両眼視野は狭くなる反面、全体視野が330°と広く、周囲の敵を発見しやすくなっています。

猫の目のしくみ
暗がりではできるだけ多くの光を取り入れるためには広がり、明るいところでは光が入りすぎないように縦型に細くなります。
目が開いたばかりの子猫は、カメラの強いフラッシュで網膜剥離を起こしやすく、失明することも多いので、フラッシュ撮影は避けましょう。


聴覚が頼り
猫は、5~6.5万Hz(ヘルツ)の周波数の高音(超音波)を聞き分けられます。
これは犬の1.5倍、人の3倍以上です。
人の耳は、1.6~2万Hzの範囲までで、私たちの通常の会話の周波数は200~4000Hz。
また、左右別々に動き、集音力に優れた猫の耳は、音のする方向と場所を的確につきとめ、その誤差はわずか0.5° という正確さを持っているといわれます。
獲物のわずかな気配や獲物同士の交信を聞き分けたり、いちはやく飼い主の帰宅する足音に気づいて玄関に迎えにきたりするのも、この鋭い聴覚があるからです。


嗅覚が頼り
犬には劣るものの、猫は人間の数万倍の嗅覚の持ち主です。
食べ物はもちろん、飼い主の判断や猫同士のコミュニケーションも嗅覚に頼っています。
ふつうは少し湿っていて、病気のときや体調が悪いときは乾いています。
この鼻で、食べ物が安全か、おいしいか、温度も計っています。

ニオイで相手を判断する
猫は飼い主や身の回りのものに体をこすりつけて自分のニオイをつけ、所有物であることをアピールします。
とくに頭をこすりつけるスキンシップは、ニオイの分泌がさかんな臭腺が、おでこ、耳のつけ根、口の両側など顔の周囲に多くあるためです。
自分のニオイをつけておき、次に会ったとき、そのニオイの有無で、安全や友好関係を判断するわけです。
オス猫が、唇を引いて口を半開きにし、恍惚とほほえんでいるような顔をすることがあります。
これは、鼻腔と口蓋の間にあるヤコブソン器官で、メス猫のフェロモン(ニオイ)をかいでいる顔です。

アイ・カラー
●猫の目の色は「アイ・カラー」「目色」といわれ、キャットショーでは被毛と並んで重要な審査基準のひとつです。
基本カラーは、イエロー(黄)、カッパー(赤銅色)、オレンジ(橙)、グリーン(緑)、ゴールド(金)、ブルー(青)、ヘーゼル(グリーンがかった黄褐色)の7色。
色が濃いほど、鮮やかに輝いているほど、高得点になります。
このほか両方の目の色が異なる「オッド・アイ」があり、日本では「金目銀目」とも呼ばれます。
白猫にしばしば見られるカッパーとブルーのオッド・アイは、青い目の側の耳が聞こえない場合が多いようです。
両方ブルーのときは両耳とも聞こえないこともあります。

猫の体のメカニズム
ツメ
ネコパンチは、猫の必殺技
ネコ科動物にとって、ツメは最初の一撃を与える武器です。
長距離を歩いたり走ったりするのが苦手な猫は、できるだけ獲物に近づいて待ち伏せし、一瞬で打撃をあたえるのです。
前足の指先に5本、後ろ足の指先に4本ずつあり、一度捕えた獲物を逃がさないためにカギ型に曲っています。
いざというとき鋭さを保つためにツメをとぎ、足音を忍ばせるためにふだんは引っこめています。


刺す、むしる、裂く
おとなの猫の歯は、上下合わせて30本。
生後半年から1年くらいの間に、乳歯から永久歯に生えかわります。
上下に2本ずつある鋭い犬歯は獲物にとどめを刺す歯、小さな前歯(門歯・切歯)は獲物の毛や羽をそいだり、むしりとる歯、奥の臼歯は肉を引き裂くためのものです。
前歯は、セルフグルーミングのきにクシの代わりもします。
猫の歯は歯車のように互い違いにかみ合うしくみなので、食べ物はかまずに丸のみします。
そのため、軟らかいキャットフードばかり食べていると、歯が弱くなり、歯石がたまって歯肉炎や歯周炎などの歯周病になりやすくなります。


猫は美食家?
猫の舌にも味を感じる味蕾(みらい)があります。
すっぱさ、苦さには敏感、塩辛さ、甘さはあまり感じないようです。
子猫のころから親しんだ味に執着する傾向がつよいため、育った環境によって魚好き、肉好きといった嗜好の違いが表れます。
猫は美食家、偏食家というよりも、舌と発達した娘覚とで、新鮮なもの、おいしいものを見分けるのが得意なのです。
舌には、ノドの奥にむかって小さな突起がたくさんあるため、音をたてずに上手に水を飲めます。
このざらざらは、グルーミングのときのクシの代わりにもなります。

ヒゲ
障害物との距離を計るヒゲ
ネコ科の特徴は、立派な長いヒゲ。
上くちびるだけでなく、目の上、頬、あごにも生えています。
よく見ると、全身の被毛にも、ほかよりも長い毛がところどころ生えています。
これらは「触毛」といって、視力を補う優れた触覚器官のひとつです。
根元にたくさんの神経が集中し、先端に少しでも何かが触れると信号が脳に伝わるしくみになっています。

気分と体調のバロメーター
アンテナのようなヒゲは、そのときどきの心理状態や感情をよく表します。
緊張して上くちびるに力が入ると、ピンと立ち前方に傾きます。
興奮するとぴくぴくし、危険や恐怖を感じたときは後方に倒れます。
リラックスしているときや満足しているときは頬に沿ってゆったり、体調の悪いときはだらんと下がります。


つま先立って、忍び足
猫の前足と後ろ足の曲っている部分、人でいえば肘と膝に見える部分は、それぞれ手首とかかとです。
地面についている部分は指の部分で、いわば、つま先立って歩いているのです。
前足はしなやかで柔軟な動きをします。
器用に指先ですくって、食べたり飲んだりする猫もいます。
後ろ足はバネのような関節と強い筋肉からなり、身長の5倍というジャンプ力の原動力になっています。
足の裏(正確には指の裏と手のひら)にある肉球(パッド)は、足に伝わる衝撃をやわらげたり、消音とすべり止めの働きをします。
肉球には神経がたくさん集まっており、地面の振動や温度、凹凸などを敏感に感じとる触覚器官の役目もあります。

●肉球には汗腺があるため、歩いた跡にニオイをつけたり、すべり止めの役目も果たします。

猫の脳のメカニズム
猫はわがまま、気まま?
学習能力
飼い主のいうことをよく聞き、多くの芸や仕事をこなす犬は知能が高く、猫は知能が低いのかというと、そんなことはありません。
知的活動をつかさどる大脳皮質の発達は、犬と猫に大差はありません。
反復学習に従順かそうでないかは、社会的動物である犬と、単独生活者である猫との習性の違いです。
実際、見事な訓練の成果を見せる猫のサーカス団や、絵を描く猫、演技をするスター猫は昔からおり、一般家庭でも、ドアノブを開ける猫や人間の洋式トイレを使える猫、猫用通用口を出入りする猫などはたくさんいます。

知能は1歳半?
しつけと反復練習によって、ダメ・おいでなどの言葉を認識できる猫の知能は、人間の子どもの1歳半くらいのレベルといわれます。
生後6ヵ月ほどで知能の発達は止まり、考えるというよりも視覚や嗅覚での認識にとどまるようです。
とはいえ、人の表情や声のトーン、素振りなどから心理や状況を敏感に察知したり、鳴き声やボディ・ランゲージで意志を伝えるなど、細やか、かつ複雑にコミュニケーションをとる情緒の豊かさを持っています。

順位のない猫社会
犬やオオカミなど社会性の発達した動物の集団は、ボスに絶対服従のピラミッド型の順位社会です。
ケンカで優劣が決まれば、劣位の方は服従を示し、無用な争いは起こりません。
猫社会では、テリトリーを共有する地域のボス的存在はいても、それ以外の猫に順位はなく、気持ちの上で対等です。
ケンカに強い猫とそうでない猫はいますが、弱い側に服従のの姿勢はなく、したがって、集団の共通のルールや上位のものに従う習性を持っていません。
ですから、ひとたびケンカが始まると明らかに劣勢の方が逃げ出さないかぎり、優位の猫は攻撃のの手をゆるめません。
劣勢側も負けを認識しておらず、優勢側も容赦しないため、再び出会えば同じケンカを繰り返します。
優劣関係が明らかなほどケンカは激しく、力関係が拮抗しているほど相手は避けます。

母子関係に基づく猫の帰属意識
猫の社会は、母子関係でつながる集団です。
ノドをゴロゴロ鳴らしながら両手で母猫のお腹を押す、しっぽを持ち上げて近づき体をこすりつけるなどの行動で、子猫は母猫への信頼や親愛を示し、お互いの結びつきを強めていきます。
この行動は、成長後も、母猫や母猫代わりの猫、飼い主に対して行われます。
子猫にとって母猫は1匹であるように、母と決めた相手に行われることが多いようです。
順位や服従のルールがない代わりに、子猫の親愛行動をとることで、その猫なりの集団を形成する行為といえます。

夜の集会は唯一の社会的行動
血縁関係のない猫同士、疑似母子関係を持たない複数の猫たちが、トラブルなくテリトリーを共有するために行う唯一の社会的行動が、「夜の集会」です。
一見、意味もなく集まっているように見えるこの集会は、集団のルールがない単独生活者の猫にとって、精一杯の親睦行動といえるでしょう。

●母猫のお乳を前足でもむ、しっぽを立てて後ろをついて歩く、体をすりつけるなどの母猫との関わりが、飼い主との関係にも生きてきます。

家でできる身体測定
日頃の観察と測定が大事
食欲はあるけど様子がいつもとちょっと違う、なんだかだるそう、というような様子の変化に気づくことがあります。
少し体調を崩しただけなのか、病院へつれていくべきなのかの判断材料として、健康時の体の正常値を知っておくことは大切です。
病気をできるだけ早い時期に発見するためにも、平熱、脈拍、呼吸数、体重の正常値を測定することを習慣づけましょう。

体温の測り方
成猫の体温は37.0°~38.5°くらいが平熱です。
子猫はこれよりもう少し高めになります。
猫は、体温測定が嫌いです。
しっかり押さえて、スピーディーに済ませてあげましょう。

測り方:
猫のしっぽを手の平全体でつかんで持ち上げ、もう一方の手で動物用デジタル体温計を1~2cmくらい肛門に差し込みます。
デジタル音が鳴ったら抜きます。
体温計は鉛筆持ちにして人差し指と親指で支えると、力を加減しやすくなります。
体温計の先にワセリンやオリーブオイルを塗り、軸を回しながら入れるのがコツ。

脈拍の測り方
成猫の脈拍は1分間に80~160回。
子猫は、月齢にもよりますが、200回前後はあります。
猫が落ち着いている安静時に測ります。

測り方:
後ろ足の上部内側1/3辺りにある股静脈に、軽く手指を当てて測ります

呼吸数の測り方
呼吸数は、安静時で1分間当り20~30回、睡眠中で約15回です。

測り方:
目で見て測定できます。
数だけでなく、呼吸のリズムや深さも大事です。
不規則な呼吸だったり、荒く浅い呼吸など体調の善し悪しを推し量れます。

体重の量り方
体重値は、薬の処方時に必要です。
個体差があるので、成長の目安としても定期的に測定しておきましょう。
出生時の平均は90~110g、1ヵ月で約400~500g、2ヵ月で800~900gが標準です。
授乳期の子猫は毎日測定し、1日5g以上の体重増加を目安に哺乳の量を調整します。

量り方:
成猫は抱いて量り、自分の体重を引きます。
子猫は台計りで正確に。

●体温の測り方:回しながら入れる
●脈拍の測り方:内股に指を当てる
●呼吸の測り方:お腹の上下1往復で1回

ワクチン接種で病気を予防
混合ワクチン
ワクチン接種は、伝染病から子猫を守るために必要な「免疫」をつけるための予防方法です。
接種していれば、かかっても軽い症状ですみます。

① 3種混合ワクチン
ネコウイルス性鼻気管炎、ネコカリシウィルス感染症、ネコ汎白血球減少症

② 4種混合ワクチン
3種+ネコ白血病ウイルス感染症

③ 5種混合ワクチン
4種+クラミジア感染症

④ ネコ白血病ウイルス感染症ワクチン

の4種類があり、5種類の伝染病がある程度予防できます。
このほかネコ伝染性腹膜炎、ネコエイズウイルスがありますが、完全に予防するワクチンはまだありません。https://tokyocatguardian.org/hospital/fiv_felv/

★授乳によって、免疫を持つ母猫から受けた免疫が働いているうちは、ワクチンの効果はありません。
いつから、どのような間隔で受けるかを、かかりつけの獣医さんとよく相談して、確実なプログラムで接種する必要があります。

猫を病気から完全に守るには・・
●ワクチンの接種と定期検診を
人工哺乳で育った子猫は、母乳からの免疫が体にできていません。
感染症の予防のため、母乳の子猫よりも早く、生後30~40日くらいでワクチン接種をします。
この場合、動物病院へはなるべく早い時間帯に行き、他の動物や人との接触は避けましょう。
ワクチンの効果や感染したときの症状には、個体差があります。
ワクチンの接種と定期検診、感染猫やウイルスを持っているキャリアの猫との接触を避けることが病気の予防につながります。

●猫のためには室内飼いを徹底
土の中には、いろいろなウイルスや細菌が含まれています。
それらに感染しているの猫と直接接触しなくても、足や体についた菌をセルフグルーミングで体内に取り込んでしまう危険があります。
外出のあと、手足を拭いても、それらを完全に取り除くことはたいへん困難です。
また、草むらの中にはマダニやノミなどがおり、これらが媒介する病気もたくさんあります。
室内飼いの猫はとくに、パット(肉球)の質が丈夫ではありません。
病気やケガなどの予防から土の上に直接下ろすことは避けましょう。
室内飼いを徹底することが猫の健康のためです。

いざというときの、かんたん応急手当

かかりつけの獣医さんを決める
かかりつけの獣医さんを決めておく
動物病院は、いざというとき間に合うように、自宅からなるべく近いことが望ましいです。
飼い主に対して、診断の内容を充分わかりやすく説明(インフォームドコンセント)してくれるか、猫の身になって治療をしてくれるかどうかなどを目安にして、よいホームドクターを決めてください。

獣医さんにかかるとき
病院に連れていくときは、診療時間、休診日などはあらかじめ調べ、以下の点に注意しましょう。

1. 電話での予約。
様態を完結明瞭に伝える。
病状によって便や尿が必要であれば、この段階で指示してくれます。

2. キャリーバッグに入れて移動。

楽の上手な飲ませ方、目薬・耳薬のさし方
●錠剤の飲ませ方
片方の手の親指と人差し指で、上あごの犬歯の後ろをはさみ、頭を後ろへ引くように真上を向かせ、口を大きく開けます。
ノドの奥に、錠剤を落とします。

●シロップ剤の飲ませ方
顔を上向きにさせ、スポイトでロの横(歯のすき間) から流し込みます。
噛んでも割れないように、プラスチック製のスポイトを使います。

●粉薬の飲ませ方
食べきれる量の食事に混ぜます。
薬の味やニオイで食べないようなら、バターに練り込んで、口のまわりに塗りつけるのも効果的。

●目薬のさし方
猫の後ろからさすと、こわがりません。
猫の頭部と首を片手で押さえて顔を傾けさせ、容器の向きが目と平行になるように持って、目尻からさします。

●耳薬のさし方
猫の頭部をかしげさせるようにして耳の中に薬を落とし、耳の後ろを軽くマッサージしてなじませます。

目薬は背後から落とす

常備しておく猫の救急箱:
イソジン(外傷用消毒剤)、ガーゼ、コットン、包帯、紙製絆創膏、消毒用アルコール、ピンセット、ハサミ、体温計、オリーブ油、ホームドクターの指示に添った薬類。

緊急時はあわてずに
パニックになっている猫の捕獲と移動
痛みやショックなどで猫がパニックにおちいっているときは、やさしく声をかけながら、すばやくバスタオルなどをかぶせて捕まえます。
猫がすっぽり入る洗濯用ネットに入れてから、キャリーバックに入れると暴れずに移動できます。
病院で猫がおびえて暴れた場合でも、ネットの開口部に手を入れて診療、治療ができます。
病院嫌いの猫には、ふだんの通院時もネットの使用は有効です。

必要な処置をして、病院へ
ケガや中毒、交通事故などで応急手当が必要になったときは、あわてず、落ち着くことがいちばんのポイントです。
どこが、どうおかしいのか、外傷があればどの程度か、猫の状態をチェックし、すみやかに必要な応急手当てをして、大至急病院へ連れていきます。

意識はないが、呼吸はしている:
意識がない場合は、平らなところにタオルを敷き、頭を少し下げ気味にして横向きに寝かせます。
口を開け、舌を引きだして呼吸しやすいようにします。
口の中に吐瀉物や唾液がたまっていたら、ガーゼを巻き付けた指でぬぐいます。

呼吸をしていない:
人工呼吸をします。
1.左胸を上にして寝かせ、口を開けて気道を確保します。

2. 両手で胸全体を2.5秒しっかり押し、空気を吐かせます。

3. 両手を2.5秒離し、口を閉じて鼻から空気を吹き込みます。

4.2と3を繰り返します(セットで1分間に12回見当)。

急激な嘔吐、下痢、けいれん、昏睡:
除草剤、殺虫剤、洗剤、漂白剤などの誤飲による中毒が多く、手足や被毛についたものをなめて起こる事故です。
体に薬剤が残っているときは急いで流水で洗い流します。
原因不明なときは、吐いたもの、便、誤飲の疑いのあるものを持って病院へ。

ヤケド:
局所の場合は、流水で15分ほど患部を冷やします。
全身の場合は濡れタオルで全身を包み、タオルごと15分ほど水につけて患部を冷やし、病院へ。

骨折:
患部を上にして寝かせ、病院へ。

出血:
浅い傷で出血が少量の場合は、患部をガーゼなどで押さえて止血できれば、病院へ行く必要はないでしょう。
出血がひどい場合は、心臓に近い部分を包帯などで2回巻きして強めにしばり、患部を強めに押さえて病院へ。

熱射病:
涼しい場所へ移して、氷や冷水で体(とくに、頭と腹部)を冷やし、病院へ。

交通事故:
平らな板などに布を敷いて寝かせ、動かないようにします。
外傷による出血があれば応急手当をして病院へ。

感電:
切れたコードをくわえていたら、猫の体には絶対触らずに、ゴム手袋をしてプラグを抜くか、ブレーカーを切り、病院へ。

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