自然治癒力を高める食事

自然治癒力って?

ネコに限らず、すべての生き物は

「体はいつでも治ろうとしている」

「体はバランスを崩したとき、自然な状態に戻ろうとする」ということです。

いわれてみれば、傷は勝手に治っていますし、風邪を引いたときも眠れば治ります。

このように、体にもともと備わっている、自然と治る力を「自然治癒力」といいます。

これは、生き物すべてが本来もっている能力です。

ネコもケンカした後、傷を舐めて治しますね。

変なものを食べたとしても、数日間は下痢をするかもしれませんが、峠を越えれば、体はもとに戻っていきます。

人間が複雑にいろいろ考えて、手を下したりしなくても、体は「勝手に」治ってくれるのです。

 

「体調が悪くなったら、食欲を抑えて、無駄な体力を使わせないようにするために、自分自身の体をだるくさせて、動けないようにする。そうすると、体は回復に専念しようとする。だから、体調を崩したときは、少食にして、ジッとおとなしくしていなさい」

 

自然界で動物たちも、体調が悪いなと感じたら、葉っぱを食べて、それと一緒に食べものを胃から吐き出し、草や土の上でジッとしているということをやります。

 

もう一つのキーワード、「少食」。

「自然界を見ろ、週に一度食事を食べられるかどうかという動物だっているんだ。1日3食なんて、食べすぎ! 体にも負担がかかる!」

 

ですから、ネコが数日食欲がない場合、本当は浄化をしたいだけかもしれないのに、そう解釈できない飼い主さんは「大変!死んじゃう! ごはんを食べさせなくては」と注射を打ってでも食べさせようとします。

もちろん、愛情あっての心配から、そのような行動につながるのですが …。

注射によって、ネコの脳は「食べなさい!」という指令を出し、ネコはそれに従って、ムシャムシャ食べはじめて、やたらと水を飲むようになるでしょう。

しかし、ネコの体は「浄化しなきゃならないんだから、余計なことしないでよ! こんなに食べたら、自然治癒力が働かなくなる!」といっているかもしれません。

もちろん、衰弱の激しい場合は、栄養補給をしなければなりません。

そのときは液体で栄養補給することをオススメします。

「消化」という活動は、人間でいえば、フルマラソンで使うのと同じくらいのエネルギーを消費するそうです。

病気で衰弱している、ただでさえエネルギー不足のときに、「消化でエネルギーを使う」のは、体にかなりの負担をかけることになるのです。

ですから、吸収しやすい栄養補給を心がける必要があります。

 

薬と手術

発熱にも意味があり、下痢にも、皮膚病にも、それぞれ意味があります。

それらの体が正常化するのに必要があって生じている現象を、あっさりと薬で勝手に止めてしまうのは、ネコちゃんの体に余計な負担がかかるかもしれません。

また、薬は、体にとっては異物ですし、エネルギー源としても利用できません。

ですから、「摂取したものは利用するか、排泄するかしなければならない」という原理原則からいけば、薬を飲めば排泄しなければいけませんから、余分な体内エネルギーを消耗することになります。

また、手術をすれば、体に傷をつけるわけですから、修復にエネルギーを消耗することになります。

問題の部分がなくなるとはいえ、肉体のバランスが変わるため、別な負担がかかることにもなるのです。
もちろん、そのデメリット以上に、今すぐ体の状況を変えなければならないというときもあります。

たとえば、ひどい炎症で高熱が続き、これ以上続いたら生命の危機につながるというような場合は、薬で早急に熱を下げて、自然治癒力を発動しやすいような体内環境を整える必要があります。

薬は、自然治癒のサポートを目的として短期間に使うときは、適切な処置といえるでしょう。

「抗生物質」という薬がありますが、これは、細菌をやっつけるための薬です。

細菌が体内で大量に増えると、炎症など、体にとって不都合なことが起こる場合があります。

そのようなときにはこの抗生物質を使用するのですが、本来は、「免疫系が機能を果たすことができる程度になるまで、細菌の数を減らす」というのが、目的です。

ほとんどの細菌感染症では、自然治癒のために、抗生物質は必要ありません。

ですから、基本的には、7日間を越えない範囲で使用することが望ましく、長期使用は、耐性菌(抗生物質が効かない細菌)発現や、重症化(薬害作用も含む)のデメリットを上回るメリットがあると獣医師が判断した場合のみに限るべきでしょう。

数カ月にわたる長期使用は、逆に薬の選択に問題があるか、細菌が間題ではないことが考えられます。

手術にも同じことがいえます。

乳腺腫瘍になったとしましょう。

自然に小さくなるケースというのは珍しくありません。

しかし、その腫瘍が大きくなりすぎて、体にダメージを与えたり、自然治癒力のパワーを越えるような場合は、手術で切除することで、困った細胞の数をいったんらすことが必要になります。

その上で免疫力を高めて、正常に近づけていくサポートの手段が手術なのです。

つまり、自然治癒力の処理レベルを越えた問題が生じた場合、手術という選択肢もありです。

もちろん、その後に自然治癒力をパワーアップする行動がなければ、せっかく手術したのに、また数カ月後に再発して、再手術ということになる可能性があるのはいうまでもありません。

 

このように、獣医師や薬は、自然治癒力をサポートし、治癒を妨げるものをとり除くことが主な役割であることがおわかりいただけたかと思います。

薬に依存する生活が悪いというわけではありません。

薬とか、医療というものは、自然治癒力を尊重した上で成立する行為だという認識を、まず飼い主さんにもっておいていただければと思います。

 

病気になってしまったらどう考えればいい?

1.部分ではなく全体を見ること

うちの健太は、2歳の頃から、目ヤニと涙がひどく出はじめました。

病院に通ったり、よいといわれる目薬もつけてみたり、いろんなことをしてみたのですが、いっこうによくなりません。

そこで、肝機能を強化する食事に変えることになりました。

そうしたらなんと、翌日から涙が出なくなり、5日後から目ヤニも止まりました。

(埼玉県草加市の中山さん)

 

我が家の猫は、1歳になったかならないかぐらいのときから、皮膚病がひどくなり、皮膚を描きまくり、あちこち出血して、毛もまばらになって、見るも無惨な姿になりました。

もともと便秘気味だったのですが、食事を変えて、お通じをよくするアドバイスを受け、やってみたところ、なんと、かゆみもおさまって、出血しなくなりました。

3カ月後、毛がだいぶ生えそろってきて、半年後には、見ちがえるほどふさふさつやつやになりました。

(愛知県名古屋市の町田さん)

 

うちのビースは、ずっと外耳炎に悩まされていました。

水分の多い食事に切りかえ、利尿強化といわれる薬を飲ませたら、2週間で外耳炎が治ってしまった!

おしっこをたくさん出したら、外耳炎がよくなったなんて信じられません。

(福岡県福岡市の違美さん)

 

どうして、こういう方法で、症状がよくなったりするのでしょう?

普通は、目にトラブルが発生したら、目を治療するものですよね。

皮膚や耳も同じで、その部分をケアしますよね。

でも、この飼い主さんたちはそれをやって治らなかったのです。

「うちの子は、腎臓結石なのですが、結石によい食材はなんですか?」などの悩みをもつ飼い主さんは多いです。

しかし、こういう質問は、実はナンセンスなんです。

「車のレースで優勝したいのですが、最高のハンドルはなんですか?」という質問と一緒なのです。

どんなに素晴らしいハンドル、エンジン、タイヤがあったとしても、それぞれが適切に組み合わされていなければ、ただの丸い輪、鉄のかたまり、重たいゴムの輪でしかないのです。

病気になったときは、食材を変えることも大切ですが、飼い主さんがどのような世話をしてきて、その子がどんな気質で、どんな食事が好きで何が嫌いか……などを把握した上で、体の原理原則に従っていろいろ組み合わせていかないと、効率が悪くて、効果が出ないのです。

 

つまり、大切なのは、

①原理原則

②組み合わせ(何と何を、どの順番で)

③手法(何を、どうする?)

という順番なのです。

 

③から始めても結果が出ないのは、珍しいことではありません。

ですから、一部を変えても、何も変わらないことはよくあることです。

偶然「食材を変えたら、劇的な効果が!」ということもありますが、この場合は、たまたま結果が出るような組み合わせができていたという話なのです。

では、①の原理原則とは、具体的に何でしょうか。

そのひとつに「陰陽五行説」があります。

ものすごくかんたんにいうと、「世の中のものは、それぞれが単独で存在しているのではなく、関係し合っている」ということです。

この説によれば、「肝は目に開孔する」「骨気は耳に通じる」というように、大腸と皮膚は密接に関係していることがわかります。

つまり、肝臓、大腸、腎臓に負担がかかっているというサインが、それぞれ目、皮膚、耳に現れるのです。

とはいっても、目にトラブルが出たら、それは必ず肝臓のトラブルが原因、というわけでもありませんが、目の症状がなかなか治らない場合には、試しに肝機能を強化してみるとよいでしょう。

実際やってみると、目の症状がよくなることも多いのです。

このように、一見関係なさそうな、ちょっと離れたところへのアプローチで、気になる問題が改善されることもあるのです。

「手法」は、条件が揃ったときに機能するのであって、それ単独では機能しないことが多いものです。

そんなときには全体を見直して、多方面からのアプローチで改善するという方法もあることを、覚えておいてください。

 

2.症状は肉体の浄化に必要な反応

多くの飼い主さんは、症状を「悪いことだ!」「今すぐとり除かなければいけないものだ!」という誤解をしています。

症状というものが「そもそもなぜ生じるのか」を今まで教えられてこなかったため、そのような反応・判断になってしまうのだと思います。

しかし、症状には必ず意味があるので、その「なぜ?」をわかっていると、慌てなくなります。

また、どこまでなら症状を放っておいていいか、どこまでいったら症状を止めるべきか、その境界線がわかっていると、判断もしやすいでしょう。

ここで、なぜ症状が出てくるのかということについて、触れてみたいと思います。

たいていの症状は、「体内で起こっているトラブルを解消しよう!」という目的で生じています。

そう、「症状」は間題解決をするための「手段」だという見方をすることが大切なのです。

この症状が出てこなかったら、体内の問題がより深刻化していくはずだったのが、症状が出たおかげで、バランスが保てるようになった、と解釈することが大切なのです。

たとえば、下痢。

下痢は単純に「こんなものが腸内にあったら大変ですから、さっさと出ていってください。出やすいように、水で流してあげます」

という解釈でいいわけです(結構乱暴かもしれませんが)。

しかし、こういう解釈の仕方を知らない飼い主さんは、「うちのネコはこの数カ月間、下痢が続いています。私は心配で心配で、夜も眠れません。どうしたらいいのでしょうか?」と悩んでしまいます。

たいてい、食事の見直しで解決します。

飼い主さんがビックリするでしょう。

もちろん、感染症で下痢をしているということもあるので、しっかり状態をカウンセリングする必要はあります。

とにかく、症状は肉体の浄化に必要な反応ですから、すべて意味があります。

症状が出たら、薬で止めるという考えは、すぐにでも見直したほうが良いでしょう。

 

3. 排泄ルート

排泄ルートの話をする前に、中学時代に習った、食べものを食べてから、体の外に出るまでの流れをもう一度復習しましょう。

私たちの体は、食事で栄養、エネルギーを摂取し、胃腸で消化・吸収し、吸収されなかったものは便として肛門から排泄されます。

腸から吸収されたものは、血液にのって肝臓に送られ、貯蔵されます。

体に不要なものは、解毒・分解されます。

血液にのって運ばれた酸素と栄養は、全身の細胞で利用されます。

もちろん、細胞だって、酸素と栄養を利用すれば、いらなくなった二酸化炭素や老廃物を排泄します。

その細胞から排泄されたものは、血液もしくはリンパ液を通じて心臓に戻ってきます。

そして、血液に戻ってきた二酸化炭素は、肺から排泄され、老廃物は尿と一緒に排泄されます。

尿から出し切れないものは、体中の穴という穴から、気体(体臭、おなら)、液体(涙、鼻水、汗、尿、目ヤニ)、固体(フケなど)となって排泄されます。

ですから、体に出てくるものは、たいていの場合「排泄し切れていないものが出てきている」と解釈すればよいのです。

これまで、出てくるものは「悪いもの」という解釈しか、できなかった飼い主さんには、出てくるものは「出し切れていませんよというサイン!」という解釈をしてみましょう。

 

4.正常化

「正常化」という言葉は、あまり聞きなれない言葉かもしれません。

活性化でもなく、抑制でもなく、もとの望ましい状態に戻るという意味で、体質改善の分野ではよく耳にする言葉です。

薬を使うと、その単一成分が活性化したり抑制したりして、体調をコントロールできるのですが、食事を見直したり、ハーブなどの薬草を使う方法では、いろいろな成分があれこれ複合的に作用して、体全体で望ましい状態に変化していきます。

 

5.血液検査

血液検査は、そのときの健康状況を反映して、ひとつの指標にはなりうるのですが、絶対的な指標ではありません。

たとえば、アレルゲン検査は、アレルギー性皮膚炎であろうと診断された場合に、どの食材が問題なのかを突きとめる検査です。

この検査で、鶏肉、牛肉が陽性となった場合、「ああ、うちの子は、鶏肉と牛肉が一生食べられないなんて……」と早合点され、「どうしたらいいのだろう?」と悩んでる方が多いのです。

結論からいいますと、体質改善を行うことで、検査結果は変わらないかもしれませんが、食べてもなんともなくなるケースというのは非常に多いです。

また、体質改善にとり組んで、1年後に再検査したところ、陽性の項目がまったくなくなっていたというケースもあります。

もちろん、検査結果が変わらない子もいますが。

つまり、血液検査の結果というのは一生のものではなく、そのとき、その状態で変わってくるものだということを覚えておいてください。

ガッカリするような結果になったとしても、諦めることなく、食事で体質改善を行えばよい結果になる可能性は、かなり高いのです。

ですから、血液検査の結果に落ち込んでしまうのではなく、希望をもって、とり組んでいただきたいと思います。

 

6. ホリスティックな見方

症状は「止めるべきではない」という考えではなく、「早急に改善すべきものだ」という解釈が一般的なのは、学校教育、家庭教育、メディアでのとり扱いが、西洋医学的な見方が主導だったからだと思います。

ですから、飼い主さんが、西洋医学的な見方と、ホリスティック医学的な見方の両方を学び(注意していただきたいのは、あくまで「学ぶ」ことであって、単に中途半端に「知る」ことではありません)、現在必要な方法を選択するための、情報が必要なんだということです。

西洋医学的な治療方針では、

「悪いものをとり除く」

「外因に対抗するものを投与する」

「本来もっている機能を増強するものを投与する」

「本来もっている力で、過剰に反応している力を抑えるものをとり除く」

という、病気の部分に焦点をあてる方法をとります。

なぜなら、「症状」とは、「体が侵略を受けた結果、傷つき、それが現れているのだから、早急に改善すべきもの」という解釈をするからです。

一方、ホリスティック医学での「症状」の解釈は、「外因に体が抵抗している状態の現れであり、じゃまをせずに働かせるべき」というとらえ方をします。

症状は、決して悪いものではないという解釈になります。

ですから、治療方針も、「病気の部分だけではなく、全身のバランスをとり戻す」ことに焦点をあてており、「自然治癒力が働く環境が整えば、体は自然に治る」という信念に基づくのです。

基本的には「症状は止めるべきではない。充分に戦わせるべきだ」という考え方です。

症状を止めなければならない状況というのは、症状によるダメージが大きく、体が耐えられない状態になる場合です。

下痢も、元気だったら命に関わる下痢ではないと思いますが、ぐったりしていたら、すぐに動物病院に連れていかなければいけません。

ちなみに、元気な下痢は、食事を変えたら治ることがほとんどです。

これは、体を全体的にとらえていこうという見方ですが、生命としてとらえた場合、肉体だけではなく、精神的な影響も無視はできません。

 

7.ストレスと病気

ネコは人間同様、ストレスにさらされると、病気になるようです。

ストレスには物質的なものと、精神的なものがあると思います。

たとえば、血尿が出て、中に結晶が出てくるという猫のお家は、線路と高速道路に面した、とても騒音が気になるお家でした。

飼い主さん自ら「騒音が気になるんです」と言っているので、防音ガラスを入れたり、部屋に防音の工夫をしたら、ネコの血尿が出なくなったというケースがありました。

夫婦の仲が悪く、毎日ケンカをしていた頃は、ネコの皮膚病がひどかったのに、仲直りしたり、離婚が決まって別居したら、皮膚病が治ったというケースもよくあります。

失業中で、イライラしていた頃は、ネコの下痢が続いていたけれど、転職先が決まったら下痢が治ったなどの例もあります。

「ストレスが病気を起こすなんて、ナンセンスだ」という方もいますが、ストレスと病気は大いに関係があるのです。

 

8. 想いは伝わる

飼い主さんの不安がペットに伝わるなどというと、「そんなバカな.……」という方がいますが、たとえば、飼い主さんが辛い思いをして帰宅したとき、なぜかネコちゃんがいつもよりベッタリとくっついてきて、ザラザラした舌でほっぺを舐めてくれたという経験がある方もいらっしゃるでしょう。

実際、飼い主さんの家族が病気になったら、ネコも同じ病気になって、そのご家族が回復すると同時に、ネコも元気になったというケースがあるなど、ネコも非常に敏感に飼い主さんの心情をとらえる生き物なのです。

また、皮膚病のネコの場合、飼い主さんが心配性だと治りにくいという傾向があります。

朝起きて、「今日はどんなによくなっているかしら?」という家庭と、ネコをひっくり返して、「今日、赤いところはどこか増えていないかしら? 毛がさらに抜けていないかしら?」と探している家庭とでは、皮膚病が治るまでの期間がまったく違うのです。

必ずというわけではありませんが、飼い主さんの思考が伝わる、そして、状態に影響を及ぼすということは認識していただきたいのです。

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