キャットフードの中身は企業秘密

最近になって、ネット上で、市販のフードに関するさまざな情報が飛びかっており、不安に思われている飼い主さんも多いと思います。

その昔、アメリカの大手ハンバーガー・チェーン店が日本に上陸したとき、「ネコの肉だ」などという噂が流れたことがあったそうです。

考えてみれば、現在どこの街角にもあるバーガーショップのすべてがネコの肉を使っていたら、それこそ「100まんびきのねこ」がいても足りないはずです。

だからといって、こういった噂を噂だからと一笑に伏すわけにもいかなくなっているのが、昨今の人間用の食肉に関するさまざまな事件が背景にあると思います。

また、インターネット上の情報のほとんどは、根拠のない話であったり、アメリカでの話だったり、想像だったりするのです。

不確定な情報ばかりが目立つのには、理由があります。

現在の日本では「事実」を知ることがむずかしいからです。

ペットフードの内容は「企業秘密」として、オープンにされることはほとんどないのです。

実際のところ、工場見学もさせてもらいましたが、そこで私が質問しても、明確に答えてくれる会社はありませんでした。

でも、立場上、知りたい好奇心は押さえられず、人間用の食肉調達の業者Aさん数名と、水産業に携わる方たちにお話をうかがったところ、同じような回答をいただきました。

中でもとてもわかりやすくご説明いただいた畜産業界のA氏と、水産業界のB氏のお話を、できるだけ誤った表現にならないことを願って、対談形式でご紹介しましょう。

畜産業者に聞くペットフードの現実

人の食べる肉・ネコの食べる肉

業者Aさん

まずは、人間の食肉の主要な流通経路について教えてください。

業者Aさん

酪農家のところで育てられた家畜は、屠畜場へ送られて、精肉に加工されます。

それが、みなさんが買いにいくスーパーや肉屋さんへ送られるのです。

業者Aさん

人間用でもネコ用でも、家畜の肥育について断片的な知識で不安が多いのですが、どんな風に育てられているのですか?

 

業者Aさん

成長促進や肥育のホルモン剤、病気を防ぐ抗生物質、害虫を防ぐ殺虫剤など、数々の薬品を与えられています。

私の印象としては、「元気な子を育てる」というよりは、「死なないように生きながらえさせている」というケースが多いです。

これらの薬品は、食肉として出荷する直前の一定期間、投与禁止となります。

これは法律上定められていることで、検査時に、これらの薬品が基準値以上残っているものは不合格になります。

これらの食品基準からはずれた肉がペット用のフードに利用されているのでは?

という話があるようですが、これも実際のところはわかりません。

しかし「絶対にない、とはいい切れない」というのが正確なところです。

インタビュアー

そうですよね。世の中には推測だけで感情的に話を展開している方(会社)がいらっしゃるようですので、「~の可能性は否定できない」ということが、「~だ」になっていることが多いのかもしれませんね。

今回、ネット上のいろいろな情報を拝見しましたが、かなりひどい内容のものもありました。

「これ、知らない人が読んだら本気にするよねぇ、勘違いするよねぇ」というものです。

 

きちんとやっているところもあるでしょうから、十把一からげにして、すべてフードは変な材料を使っているというような風潮は問題だと思います。

 

業者Aさん

そうですね。不必要に消費者をあおることは建設的ではないと思います。

これからは、オープンな企業が生き残っていけると思いますので、消費者のみなさんがちゃんとした情報を入手して、適切に考え、判断できるようになることが必要だと思います。

インタビュアー

ところで、輸入肉についてはどうですか?

業者Aさん

肉が輸入される場合、日本では、コンテナごとに厳重に検査を行います。

それで基準をクリアしたものだけが商社などに渡って、各販売店さんのところに送られます。

業者Aさん

肉の品質はどんな風に評価されるのですか?

業者Aさん

品質のよいものから、A~Eランクに分類されます。

ベットフードに使われる肉は基本的にはEランクになります。

Aランクの肉を使ったら、買える人がほとんどいなくなります。

ペットフードの原価は、かなり低く抑えなければなりません。

というのも、消費者には自段が高いと受け入れてもらえないからです。

ですから、それなりの価格のものを使わざるを得ません。

工場も、生産するとなると、一度に何千、何万袋と大量につくらなければならないので、売れないものはつくれないのです。

インタビュアー

なるほど、そういうものなんですか。

業者Aさん

はい、そういうものです。

インタビュアー

では、今、ささ身製品を多く目にしますが、あれはどうなんですか?

業者Aさん

ほとんどが、中国産の前のささ身です。

もちろん、ランクはほとんどがEランクですし、基本的には、肉の混入率は5%程度なのです。

 

インタビュアー

肉の混入率はそんなに低いのですか?

 

業者Aさん

5%はいいほうで、中には3.5%という会社もありますよ。

10%なんてとんでもない、使いすぎです。

インタビュアー

はぁ……それもささ身使用という表記でいいのでしょうけど、消費者の受けている感覚とはずいぶん違いますよね。

業者Aさん

ペットフードとしての基準があり、その中で「その製品がビーフと謳う場合、牛肉が5%以上混入されていなければならない」と決められているのです。

とりようによっては、「なんでもいいから5%入れればいいのね」と解釈する会社がいても不思議ではありません。

というか、現状ほとんどそう解釈されているのです。

インタビュアー

国産肉は使われないのですか?

業者Aさん

 

かなりむずかしいでしょうね。

価格的に合わないから、国産肉は使えないです。

 

インタビュアー

いわゆる4Dミート(「死亡した」「死にかけている」「病気の」「負傷した」をそれぞれ表す英語の頭文字Dを4つ並べ、それら家畜の肉は「4Dミート」と分類されている。当然人間の食肉としては不合格)が、ベットフードに使われているという噂がありますが、あの話は本当なのでしょうか?

業者Aさん

正直なところ、私たちにはわかりません。

というのも、屠畜場で発生した皮や頭、骨、血液、尿、英便、毛、膿汁、腫瘍などを引きとって処理してくれる会社があるのですが、そこから先、どうなっているかは、実際のところわかりません。

現状はっきりいえることは、「一切ないということはいいきれない」ということです。

疑わしいのではなく、わからないというのが正確な表現です。

もうひとついえるのは、4Dミートが人間の食卓に並ぶことは絶対にないということです。

もし、そんな肉を流通にのせたら、大問題です。

その会社が吹っ飛びます。そんな冒険ができる会社はないです。

 

インタビュアー

ドライフードはどのようにしてつくるのですか?

業者Aさん

ベット用ドライフードは、一般的には水と材に調味料と保存料を混ぜ合わせてつくられているようですね。

インタビュアー

確かに、私もペットフードの工場を見学させてもらったのですが、行ったところはそうしてつくっていました。

ところが、あの粉は、いったい何なんですか?

業者Aさん

穀物の粉とか、卵の数とか、肉の初とかです。

それ以上どんな粉かといわれても..…粉になるまでの業者Aさんセスは、基本的にはわかりません。

どんな材料を使われているのか、どのようにして回収されたのかもさっぱりわからないのが現状です。

 

インタビュアー

粉というと、あの肉骨粉とかですか?

業者Aさん

そうですね。「ミートミール(肉粉)」とか「ミートボーンミール(肉骨材)」といわれているものです。

インタビュアー

どうして粉なのですか?

業者Aさん

そもそも機械が違うのです。

粉を入れて製品をつくる機械と、肉を入れて製品をつくる機械とがあるのです。

粉を入れて製品をつくる機械に肉を入れたら、壊れてしまう。

ですから、その工場がどんな機械を導入しているかで、粉でつくるか、肉でつくるかが決まります。

また、粉を使うことで、原料が日もちする、使いやすい、混ぜやすい、固めやすいという、つくる側のメリットがあります。

肉に限らず、かたまりや粒があると、かなり一所懸命混ぜ合わせても、ところどころで多い部分と少ない部分が出てきて、品質が安定しないというデメリットがあります。

つくる側としては、やりにくいんですね。

インタビュアー

でも、世の中には、こだわりの肉を使っていると謳っているものがありますよね。

先ほどのように、どこから手に入れた粉かどうかがわからないという材料の使い方ではないと思うのですが。

業者Aさん

たとえば「こだわりの国産鶏肉を使用!」というフレーズがあると、ものすごく良心的でこだわっているようなイメージを受けますよね。

でも、販売価格がだいたい決まっている、原材料費を抑えなければならない状況であることは、輸入肉を使う場合と同じです。

ではどうするかというと、こだわりの国産鶏が原材料なのは確かなのですが、使われている部分が、消費者の方がイメージされる部位とは違うのです。

インタビュアー

どこの部位を使うのですか? 内臓だけとかですか?

業者Aさん

いや、そんな高級な部分は使えません。

まず、卵を産みおわった鶏を使います。

その胸肉やモモ肉は、人間の食肉としてはずされます。

インタビュアー

でも、こだわりフードは、そこの肉が使われているような印象を受けますが…。

業者Aさん

ええ、ほとんどの方がそういう勘違いをしてしまうのです。

しかし、販売価格から考えて、たとえそれがEランクの肉だとしても、高級すぎて使えないのです。

インタビュアー

では、どこを使うのですか?

業者Aさん

肉をはずせば、ガラが残りますよね。

そのガラを特殊な機械がある工場で、骨ごとミンチにするのです。

インタビュアー

特殊な機械でないとできないのですか?

業者Aさん

普通のミンチの機械でつくると、カッターの歯が欠けてしまいますから、骨も含めてミンチにできる特殊な機械にかける必要があります。

インタビュアー

なるほど、その骨入りミンチを使うわけですね?

業者Aさん

いえ。まだ高いです。

 

インタビュアー

えっ、そうなんですか?

業者Aさん

「一番搾り」とか「二番搾り」という言葉をご存じですか?

インタビュアー

はい。

 

たとえば、オリーブオイルの場合、最初にオリーブを押しつぶして出てきたオイルが「一番搾り」、そのときの搾りカスを加熱圧縮してもう一度搾り出した油が「ニ番搾り」という感じですよね。

業者Aさん

そうです。

 

で、先ほどのミンチがありますが、あれから赤身、つまり肉を搾り出すんです。

これを「一番搾り」といいます。

インタビュアー

なるほど、その一番搾りを使うわけですね?

業者Aさん

いえいえ、まだまだ値段が高い。

しかも、この一番搾りはまだまだ赤身が多いので、人間の食肉として、ハムやソーセージに使います。

次に、その搾りカスをもう一度搾り出すんです。

これが「二番搾り」です。

二番搾りは一番搾りに比べて、白っぽい。

骨の割合が多いですからね。

「カルシウムがたっぷり」といわれればそうなのですが……。

着色料を入れるのは、白いフードは肉のイメージとは違うので肉色にしたり、他のナチュラルなカラーにしたりするためです。

また、ペットの食いつきをよくするために、調味料エキスを混入します。

これがキャットフードに使われる、ペットフード業界の一般的な「鶏肉」です。

というか、皆さんに受け入れていただける価格帯にするためには、二番搾り以上の肉を使うのは、コスト的に非常にむずかしいのです。

インタビュアー

なるほど、これが「こだわった国産鶏を使っています」という会社の企業努力でしたか。

「国産鶏使用」などと書かれると、「原材料が高いですよ!」とか「安全ですよ!」というイメージがありますが、現実はそういうこともあるんですね。

業者Aさん

そうですね、何しろ販売価格がある程度決まっていますから、価格的にちゃんとした材料は使えないんです。

メーカーのほうも、「脂肪を多く含む肉を使うと、酸化防止剤を大量に入れなければならないので、それは最小限に抑えたいから、ささ身や、皮なし胸肉を細かく刻んでフードに60%添加しました」というようなものをつくりたい気持ちはあると思うのですが、それでは、広告をして店頭に並べると、誰も買えないような価格になってしまうでしょう。

お金はいくらでも払うという方ばかりならいいのでしょうが、一度に1万袋ぐらいつくりますから、現実的にはかなりむずかしいですね。

インタビュアー

あのガラについた肉が原料だということは、初めて知りました。

私も「肉」を使っていると思っていました。

ということは、ガラも重要な資源なのですね。

業者Aさん

しかしですね、大きな工場で、鶏をさばいた後、併設された工場に骨ごとミンチにする機械があればいいのですが、そういう機械がない工場もあるわけです。

そうすると、温度管理もなく、常温でコンテナに集められたりするケースも、実際あります。

上から幌をかけてトラックに積まれて、機械のある工場に送って、すり身にします。

 

インタビュアー

そんなこともあるのですか? すり身になるまで、どれくらいの時間がかかるのですか?

業者Aさん

 

だいたい朝に光をさばいて、夕方頃からミンチにかけます。

インタビュアー

それまで、温度管理はされないのですか?

業者Aさん

回収業者によります。

これ以上はわかりません。

 

缶詰フード・レトルトパック

インタビュアー

 

缶詰はどうでしょうか?

業者Aさん

内臓をうまくカットして「肉」に見せているなという印象を受けました。

インタビュアー

といいますと?

業者Aさん

はい、内臓は人間が食べられるものに関しては食肉の流通にのりますが、それ以外のものは、お金を払って回収業者に回収してもらっています。

非常に臭みがあるものが多く、マニアの方以外あまり口にはされないからです。

インタビュアー

缶詰の肉は内臓なのですか?

業者Aさん

すべてがそうとは限りませんが、私が見た中には、そういうものもありました。

インタビュアー

缶詰の加工された肉を見てわかるんですか?

業者Aさん

 

はい。

 

インタビュアー

でも、その臭みがネコの食欲をそそるということはないですか?

業者Aさん

あるかもしれませんが、私が気づいたものはほとんどが香料で抑えられていますね。

やはり、飼い主さんが嫌な気分になったら、次から選んでもらえませんからね。

インタビュアー

レトルトパックはどうでしょうか?

業者Aさん

レトルトパックは、2年ぐらい長期間保存するための非常に便利な加工法です。

高温高圧殺菌するため、腐敗という点に関してはかなり安心してよいものです。

インタビュアー

詰める前に殺菌するのですか?

業者Aさん

もちろん、詰めた後です。

そうでなかったら意味がありませんからね。

インタビュアー

それはそうですね。

でも、そんなに高温で、素材は傷まないのでしょうか?

業者Aさん

高温高圧殺菌すると、どうしても食味、食感が変わってしまいます。

高温高圧で素材が死んでしまうんです。

インタビュアー

でも、とても便利ですよね。

業者Aさん

はい、便利です。

水分が含まれていて、保存料を含まずに長期保存できるという点では、魅力的な保存方法かと思います。

インタビュアー

そうですね。

私もときどきカレーやスパゲティーのレトルトを食べますが、便利ですよね。

でも、こうやってお話をうかがってきますと、便利さを追求するならば、食材の質や化学薬品、食感など、何かは犠牲にしなければならないということですか?

 

業者Aさん

現状ではそうですね。

というのも、素材が素材でないような状態にしないと流通できない現状があるからです。

たとえば、スーパーで「キャットフードを買えるようにしよう」とすると、そこのスーパーで数カ月間は陳列されなければならないですし、その前に代理店や問屋などがあるんです。

問屋さんでは「最低でも貸味期限が1年以上もたないものは扱えない」といわれてしまうことが多いのです。

インタビュアー

なぜ、1年以上ももたせなければいけないのですか?

業者Aさん

流通上の問題です。

メーカーから、直接お客様のところに届くのならば、賞味期限が短くてもかまわないかもしれません。

しかし、メーカー→代理店→問屋→小売店→消費者と、メーカーと消費者の間に中間流通業者が入るため、その分、消費者のもとへ届くのに時間がかかります。

どんどん売れるものでしたら短くてもよいのですが、たいていのベットショップやスーパー (小売店)では、在庫として数カ月間は陳列されるのが現状です。

その前に、たとえば問屋で3カ月間保管されていたらどうなるでしょう……ということは、やはり1年以上は賞味期限がないと恐くて扱えないんですね。

インタビュアー

なるほど、そういう仕組みなのですね。

それは仕方ないですね。

でも、その間の温度管理は?

業者Aさん

いろいろな代理店や問屋さんがありますから、メーカーは最悪の事態を想定してつくらなければなりません。

インタビュアー

だからいろいろなフードの賞味期限が1年以上なんですか?

業者Aさん

たぶんそうだと思います。

これはあくまでも推測ですが。

インタビュアー

でも、肉とか、あんなに脂肪分があるものを1年以上、常温で保存ができるというのは、便利だけれど、ちょっと不自然ですよね。

業者Aさん

かなり不自然です。

インタビュアー

ということは、かなり保存料が含まれているということでしょうか?

業者Aさん

はい。量としてもけっこう必要なわけです。

ですから、できるだけ安価な保存料をたくさんほしいという事情があって、エトキシキンや、BHAなどが使われて、問題になっているんだと思います。

保存料の値段もけっこう大きいんですよ。

インタビュアー

そうですね。

キャットフードの原価に保存料は含まれているんですね。

最近は「ナチュラル系」のフードが多いですが、あれはどうなのですか?

業者Aさん

非常に答えにくいのですが、表示義務のない保存料を平気で使っているところもあります。

両極端ですね。

しっかり頑張っているところと、ナチュラルとえば高値で売れるから参入してきたとしか思えない会社とがあります。

これ以上はちょっと勘弁してください。

インタビュアー

わかりました。

いろいろ教えていただきまして、ありがとうございました。