哺乳とミルク
哺乳開始の時期は母ネコと子ネコの関係でそれぞれ違います。
生まれてすぐに母ネコから離れ母乳を一滴も飲んでいないこともありますし、少したってから離れることもあります。
捨てられていた子ネコの場合は、捨てられたときの大きさ、季節、拾われるまでの時間などの条件で健康状態が大きく違います。
元気な場合もあれば、弱っている場合もあります。
それぞれの状況を考えながら哺乳をしなければなりません。
子ネコが生まれたときの大きさは100~120gですが、10日もすると体童は約2倍になり目も開いてきます。
生まれて3週間はミルクしか飲まない授乳期です。
昔は牛乳を飲ませたのですが、今はネコのためのミルクが市販されています。
牛乳や人用のミルクでも元気な子ネコなら育つこともありますが、成分が違い、ネコ用ミルクを使う方が失敗がありません。
ネコ用ミルクはネコには消化できない乳糖を分解する酵素ラクターゼが添加されていますし、必須アミノ酸や脂肪酸が調整されています。
もちろん哺乳ビンもネコ用があります。
人の育児の経験のある方もたくさんいらっしゃるでしょうが、哺乳ビンは人の未熟児用でも子ネコには大きすぎます。
人の乳児と子ネコでは大きさ、たくましさも比較になりません。
ミルクを吸う力は元気な子ネコでも弱く、少し弱っていると口を開けることもできません。
ネコは人に比べ死亡率の高い弱々しい生き物です。
子ネコの死亡率の60%は生後1週間が占めています。
ミルクを哺乳ビンで飲ませようとしても、素直に飲んでくれる子ネコばかりではありません。
むしろ嫌がるのが普通です。
飲まないネコに飲ませるには、口の中に乳首を無理に入れて少しミルクを出します。
ところが哺乳ビンというものは子ネコが吸ってはじめてミルクが出るようになっているのでそのままではミルクは出ません。
ほとんどの人はこの段階で乳首の穴を大きくして失敗します。
むしろ全く飲む気がなければ昔からのスポイトや動物病院で使うカテーテルの方が良いでしょう。
ミルクの濃さは使い方に書いてあります、これはあくまで健康な子ネコの場合で、体力がなければ消化することはできません。
最後の肋骨付近に胃があり、そこの付近がいつも大きければ消化力が落ちています。
このような場合はミルクの濃さを半分くらいにして、すぐにエネルギーとして使えるブドウ糖を薬局やスーパーなどで求め少し混ぜてあげます。
元気でお腹の空いている子ネコはすぐミルクを飲みます。
そんな子は何も心配ありません。
お皿にミルクを入れるとすぐに飲む子ネコは、ミルクだけでなく子ネコ用の食器を準備してください。
離乳食
子ネコにはミルクという固定観念が私たちには定着しています。
ミルクは授乳期を外れても、幼弱 な動物にふさわしい完全食と思い込んでいます。
まず子ネコにはミルクという固定観念は捨ててください。
確かに生後3週間以内ならミルクしか飲まないでしょが、それより大きければ固形物を食べる年齢、つまり離乳期です。
4週間になると体重も生まれた時の3倍になり、健康な子ネコなら母ネコから離れ行動するようになります。
母乳だけでなく違った食べ物に少し興味を示し、母ネコの食器に首を入れることもあります。
最初は肉や魚に興味があるか試してみましょう。
興味があれば匂いを嗅ぎ食べようとしますが、簡単には食べることはできません。
食べやすいようにネコ用のミルクを混ぜて、ドロドロに柔らかくします。
子ネコが食べ始める最初のころは、食べるというより吸う感じでかむことはできません。
すりつぶした肉や魚をミルクと混ぜて指の先に乗せて口の中に入れてみてください。
吐き出そうとしなければ多分食べてくれます。
自分で食べる時は小さな浅い皿に入れてあげてください。
兄弟がいれば足を食器の中に入れて大変ですが、汚くなれば洗ってかまいません。
洗うことは子ネコの健康にそれほど問題はありません。
もっとも親がいればきれいに舐めてしまい洗う必要もありません。
1カ月以上過ぎていれば自分で食器に首を入れるのが普通ですが、生後7~8週までは母ネコの授乳と離乳食の併用です。
ネコにはやはりキャットフードということで、キャットフードを使うこともできます。
ドライのキャットフードにミルクとお湯を混ぜて柔らかくしてあげてもかまいません。
この時のドライフードはやはり成ネコ用より子ネコ用を使ってください。
ただ缶詰に比べると消化率が落ちますので、下痢があったりすれば止めた方が良いでしょう。
1カ月以上たっていれば固いまま食べる子ネコもいます。
ネコは子ネコの時の食事にこだわる傾向が強いと言われていますので、いろんな食べ物を与えてみてくだい。
子ネコ用のフードにはウエットといわれる缶詰もあります。
水分がもともと75%くらいありますからそのままでもかまいませんが、少しミルクとお湯を混ぜて柔らかくしてもかまいません。
缶詰といえば人間の赤ちゃんの離乳食もたくさんの種類があります。
野菜や果物だけのものは使えませんが、肉やレバーペーストを主成分にしているものは使えます。
もちろん使うのは食べ始めの一時期だけで、その後はキャットフードや自家製のネコの食事にしてください。
子ネコの材料は、生後4週間以上で自分で食べることができればどこの家庭でもあるものばかりです。
生後6カ月になればカロリー要求量も成ネコと同じになります。
発育期の食事
子ネコは生後3、4週目になると自分で固形物を食べるようになりますが、母ネコがいれば7、8週目まで授乳が行なわれます。
しかし母乳を飲んだとしても形式的で、必要とするカロリーの80~90%は母乳以外でまかなわれます。
ネコはイヌに比べ独立が早く環境さえ許せば、子ネコは12週目にもなると自分でハンティングを行い、自前の食事の一部を確保することができるようになります。
生後6カ月になるとほぼ成ネコと同じ体重になりますが、1年くらいまでは大人のネコよりたくさんのカロリーが必要です。
生後2カ月の子ネコの体重1㎏の必要カロリーは、成ネコの必要カロリーの約3倍です。
体に比べて子ネコの胃は成ネコより大きいとはいっても3倍もあるわけではなく、成ネコよりエネルギー価の高いフードを、回数を多く食べさせなくてはいけません。
食事の回数は、成ネコならいつもフードを出しっぱなしに自由に食べさせてもかまいませんが、子ネコの食べ物はカロリーが高いだけ傷みやすく、食事の時間を決めた方が良いと思います。
物の味覚には生きていくためのいろんな仕掛けがあります。
生きていくためには栄養のバランスを保たなければなりません。
また明日の食物の保証もありません。
そのためには食べられるときに、食べられそうな物を、食べたことがなくても食べなくてはいけません。
特にネコは新しい食べ物に挑戦する性質があります。
ただ何の警戒もなしに口にすると危険ですから、食物の選択について安全性を確保するためのシステムが備わっています。
草食動物はいつも同じ草ばかりを食べ味覚が鈍いように思いがちですが、 草食動物の舌には人やネコとは比較にならないくらいの味を感じる味蕾があります。
草食動物が食べているのは同じ味の草のように見えますが、草の種類は数が多く味も豊富なのです。
人やネコよりはるかに豊かな草の味の世界を持っています。
人の食事を考えてみましょう。
ご飯やパンのように毎日食べてあきない物と、数日食べるとあきるものがあります。
毎日食べてあきないものは文化によって違いますが、人の場合、炭水化物の多い植物食がほとんどです。
逆に数日食べてあきるものは、タンパク質や脂肪に富んだ動物食が多いようです。
動物はこの二つの味覚があることにより、バランスのとれた食物を摂ることができます。
ネコにも当然この性質がありますが、毎日食べてもあきないものは人と逆で、タンパク質や脂肪に富んだ動物性食物になります。
動物性の食物だけでも問題はなく、炭水化物は必要ないことがわかっています。
新しい食べ物に挑戦する味覚は子ネコの早い時期、離乳が始まるころに決定されます。
この頃にいろんな種類の食べ物が与えられたネコは、大きくなっても偏食にならず新しい食べ物を受け入れやすいネコになることがわかっています。
子ネコのエネルギー要求量は大変高く、離乳の初期は脂肪やタンパク質に富んだ動物性の食物を数多く与えてください。